第15話 急展開

ホーバック邸に急な来客があった。

ニックが医学院の池で妙なものを見つけたので

すぐ来て欲しいとの事だ


王様の呼び出し待ちで動けないはずなんだが。

どうしようか迷っていると。

ホーバックさんが「行ってこい」といってくれた。


馬車で医学院に向かう。

馬車を降りて、案内の人と中庭に向かう、

向こうでニック君が呼んでいる


「ポジャカ君こっち」


ニック君の指さす方に池がある。

「この水が変なんだ妙な物が混じっている様に感じるんだけど

 ポジャカ君なら何か分からないか?」


私は池の水に集中してみた。「うわ~」思わず声を上げた。

この感じ粒から圧迫感を感じる・・・あとは怒りの感情か?

このしてくるこの感じか


「ポジャカ君、初めましてじゃな、

私は王都医学院の学院長でサラバスという、

なにか分かったのかね」


立派な服を着た老婆に声を掛けられて、見るのを止めた。


「すみません、原因に予想が付きましたが、

 有効な対策はありません」

 私には、こう答えるしか無かった。




  バンダル王国王城 会議室

  

  前回と同様 


 アグライト・バンダル国王、サバガム・ドニ宰相、リグナス・バラム公爵等の国の要人と王都医学院のサラバス学院長がテーブルに付いていた。


 「それで、病気の原因は判ったのか」と国王

 「ああ、王都の全ての水に何か混じっている」

 「何かって、水なんて真っ先に調べませんか?」と公爵

 「ポジャカの講習を受けた新人が、その講習を実演中に見つけおった。

  その魔法以外では発見不可能じゃ」

 「結果的にですが王がポジャカを呼んだのは正解でしたな」と宰相


 「ポジャカは何か予想が付いたのか、有効な対策はありませんと言っておった」

 「原因が分かったのか?」

 「聞いたのじゃが、あくまで予想です。

  事実ならそれこそ、手がありませんじゃと」


 「ポジャカをここに呼ぶか?」

 「ああ、それしか無いじゃろうな」




 ああ、とうとうここに呼ばれたか。奥にいる見事な赤毛が国王陛下だね。


 横にいるのが宰相か大臣かな?

 もう一人の赤い髪の人は王家の血筋だろうから公爵様かな?


 あとはサラバス学院長か


 「ポジャカか我はこの国の国王アグライト・バンダルである」

  とりあえず、頭は下げとこう。


「お前のおかげで、王都の水の異変に気が付いた、

どうやらお前は何か別の事にも気が付いている様だ、

それを教えてはくれまいか」


 答えても良いよね?


「申し上げます。確かに私の教えた方法で医学院のニックが水の中の異物を確認し、

 私もそれを確認しました。

 しかし、その粒から感じる波動と似たようなものを感じた事がございますが、

 あくまででございます。

 この事を口にすれば、他の可能性を排除しかねないと考えました」


「そうか、しかし、どれだけ調べても我々には元凶の予想すらつかないのだ。

 だから少しでも似ているなら教えて欲しいのだが」


「ポジャカ、あんた酷く怯えていたね。一体何に気が付いたんだい?」


 私は大きく息を吸って整えた。

「判りました、水の中にあった粒子の波動、

これに似た感じを私は3年程前に故郷の湖で感じました」


「なんだって、それじゃあ」

「はい、私が出会った青い蛇と同様の存在が、

この近くで怒り狂っている可能性があります」


  会議室は重い沈黙に包まれた。

 国王は苦しそうに

 「確かに、それが本当なら打つ手はないな」

  と力ない声で呟いた。


 「王様、この王都周辺で、こういった存在の伝承は有るのでしょうか?」

 「いや、聞いた事は無いが、皆は知らぬか?」

 「聞いた事は無いね」とサラバス学院長

 「知りませぬな」とおそらく宰相?


 「王様、私に調べる許可を頂けますか?」

  会議室の全ての目が私に集まった。


 「ポジャカ、何をするつもりじゃ?」

 学院長に聞かれる。


 「今回、医学院敷地内の池の水に大量の粒子が有る事が判りました。

  王都内の他の池や井戸の水を調べる事で

  粒子の濃度の違いがあるかもしれません。

  また、粒子の存在しない水場が見つかれば、

  住民にその水を優先的に飲むように勧める事も可能になります。

  あくまで可能性ですが、濃度の違いが分れば元凶の大まかな位置や方向を知る

  手掛かりになるかもしれません。

  確か『青の雫』の投与で患者に関しては

  1か月程度の猶予はありそうだと聞いています。

  それならば、その間に自分に可能な事からやっていこうと思いまして」


  会議室の誰もが何も言えないでいる。


 「私のような子供だけでは入れない場所がありますので、

  出来れば1人大人の方を付けて頂ければありがたいです。

  それと私が見つけた内容はサラバス学院長の方に報告させて頂きます」


 「分かったよ、医学院からマゼッタに行かせよう。

  ポジャカが魔法を教えたニックとマーシィも連れておいき」


 「ああ、近衛からギルニアとセラメルを付けよう」


 「はい、ありがとうございます。

  濃度の基準を作るのに医学院の池から始める事にします。

  あと、書き込んでも良い王都と王都周辺の地図も用意願います。

  では明朝より、さっそく取り掛かります」

  と言って退出させてもらった。



 【サラバス学院長】 


 会議室の中は誰も言葉を発しようとはしない。

 それはそうだろう、

 国王を含め国の重鎮たちが8歳の子供に現在可能な方法を説かれてしまった。


「しかし、ニックが8歳の子供だと思ってはいけないと言っていたが想像以上だね。

 私は前に陛下に”大人の方の借りが大きすぎる”って言ったことがあったね。

 だけど私も実際には理解出来て無かったみたいだ」


「ああ、自分の出来る事を冷徹に判断して情報を集める。

 情報の集め方、行動理由も明確だ。

 まるで、学者か役人と話しているようだった」


「違うよ、冷徹に判断する事で自分の感情を殺しているのさ」


「感情を殺している?」


「あの子は3年前に、実際に『青の神』に会っている。

 そんな子が、好き好んで怒り狂っている別の神に近づく訳が無いだろう。

 自ら冷徹に判断する事で恐怖感を無視しているんだろうね」


「それでも、行動するのだな 」


「大勢の命がかかっているからね」


「本当は逃げ出したいだろうにな」


「子供のあんな姿を見せられると大人はツライね」 


「ああ、不甲斐ない大人ですまないな」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る