第14話 王都到着

 予定通り3日目に王都に到着した。

 道中は私にとって非常に有意義な時間だったが、

 もしかしたらギルニアさんやセラメルさんにとっては少々疲れたかもしれない。


 さすがに公爵家の馬車だ何のチェックも無しに入っていく、

 そして1件の屋敷に到着した門の前にホーバックさんが

 待ってくれている。


 「ホーバックさん、すみませんお邪魔します」

  ん?ホーバックさんの顔色が悪いぞ


 「ああ、ポジャカよく来たな入ってくれ。近衛騎士団の方もご苦労だった。

  この子を無事届けてくれたことに感謝を申し上げる」

 「いや、無事王命を果たせてよかった。では失礼する」

  といって帰って行った。


 おそらく、応接室に通されお茶を出してもらう。

 そして聞いた。

 「すみません、近衛騎士団の方は知らなかったのですが。

  ホーバックさんは今回の勅命について何かご存じでしょうか?」


  ホーバックさんが言い淀む。これはかなりヤバイ案件だな。

 「かなり、危険な内容ですか?」


  ホーバックさんが観念したように口を開いた。


 「今、この王都で原因不明の病が発生している。

  感染者は子供だけ、症状は発熱と全身の痛み、感染源も感染経路も不明だ。

  患者の共通点は王都に居る子供だけ、他の町では発生していない」


  いかん、まったく予想外の案件だった。ホーバックさんの話は続く

 「王都医学院のサラバス学院長の話では、

  今の所、少量の『青の雫』を投与することで症状が緩和されている。

  また、患者を王都から移動させた場合は症状の進行が止まっている」


 「どちらかと言うと『青の雫』の増産命令が出そうなんですが、

  何故呼ばれたんでしょう?」

  現に『青の雫』の生産止めてきたよ。


 「ああ、『青の雫』も症状が緩和されるだけだしな。

  王はお前にこの病気の原因究明を期待している」


  いくら何でも、生まれて初めて村を出た村人にする話では無いな。

  となると


 「この髪のせいですか?」

 「ああ、実は髪の色が変わる話は過去にあってな。

  特に有名なのが赤い竜に会って髪と目が赤く変わるという話だ」


 「そんな、話があったんですか?」

 「この国の初代国王の話だ、だから王家に連なる一族は今も赤い髪だよ」

 「この国の話でしたか」

 「お前の子孫もその髪を受け継ぐかもな」


 「私の場合は竜では無くて蛇だったんですが?」

 「関係ないな、それより代々受け継いできた赤い髪よりも、

  直に受けたお前の方が受けている加護が強いんじゃないかと考えているらしい」


 「とんでもない話ですね?」

 

 「だから、来てすぐに発病することは無いと思うが、

  体調が悪くなったらすぐに言うんだいいな?」

 「はい、でも子供ってホーバックさん、お孫さんは大丈夫なんですか?」

 「すまない、もう発症した。今は王都から離れさせている」


 「そうですか、では何とか原因を探さなければいけませんね」

 「まあ、今は王宮からの呼び出し待ちだから動けないぞ」

 「そうでした、大人しくしています」




  王都医学院 中庭 池の前


   【ニック】

 今、俺は池の前でマゼッタ教官に約束した講習法を実演している。

 教官と学院生の前でやるのは予想してましたが、

 何故ここにサラバス学院長がいるんですか?


 「では、説明させて頂きます。現在、流通している『青の雫』ですが。

  特定の樹液から水魔法を用いて水を抜く事で作られています。

  樹液の重量20から重量19の水を抜いた物が

  現在患者の口に入っている『青の雫』になります。

  この状態からさらに重量の7割の水を抜く事で固体に変わります。

  ちなみに水を抜くのに火を使用した場合は薬効は消えていました。

  次に、樹液から水だけを抜く方法ですが。

  水魔法の使い方、水の生成と水の移動。

  この水の移動を使って抜かれていました。

  これを成功させるために、樹液の中の『青の雫』と水を認識する訓練から

  始まりました。まずはこれをご覧ください。」


  水を生成して見せる。


「この水は当然ながら魔法で動かせます。そして」


 水を池に入れる


「こうして、池に入れて、魔法で作った水と池の水の違いを確認して、

 違いが無い・・・・あれ?」 


 なんだ、これ? 戸惑う俺にマゼッタ教官が声を上げる

「どうした、ニック、失敗か?」


「サラバス学院長、池の水に魔力に反応する物質が混じっているのですが、

 何かご存じですか?」


サラバス学院長の顔色が変わる。


「ニック君、本当か?」

「はい、マーシィ、君なら判るはずだ。確認してみてくれ」

「わかった、やってみる」


  マーシィが集中している


「何? これ? 水の中にすごい数の粒がある」

もうこれは講習法の実演どころでは無くなっている。


「すみません学院長、ポジャカ君ならもっと詳しくわかると思います」

「わかった、すぐホーバックの所に呼びに行かせよう」



王都外郭内 ホーバック邸


王宮からの連絡か、何日待たされるか分からないな。その時間を何に使おうか?


「ホーバック様、申し訳ございません」

執事さんが非常に申し訳なさそうに声を掛ける。


「どうしたホルマ? まさかもう、王宮から使者が来たのかな?」


「いえ、グレイク先生と・・・クリスパメラ様です」


「いや、ホーバックさんすみません・・・・来客中でしたか?・・・・」

くたびれた格好の冴えない中年男性と


「グレイク先生、あんたなにやってるの? 話相手が危ない貴族だったらどうする気?」

赤い衣装の見事な金髪の美女が現れた。


中年男性が、驚いた顔でこちらを見詰めている。

「ホーバックさん、この髪・・・まさか、この子が?」


「この子? 変わった髪の子だね。メル嬢ちゃんのお友達かな?」


ホーバックさんがため息をついた。

「そういえば紹介する約束をしていたな。この子が100年以上前に失われていた『青の雫』を再現したポジャカだ」


二人が動かない中、執事さんが部屋に飛び込んで来た。


「ホーバック様、大変です」

「ホルマ、今度はなんだ」

「医学院のサラバス学院長から、ポジャカさんに魔法を習った2人が医学院の池の水に異変を見つけたので至急ポジャカさんに確認して頂きたいそうです」


「私は王宮からの連絡待ちですが? 」


ホーバックさんは即座に決断する。

「王宮からの使者には、私が対応する。ポジャカ、すまないがすぐに医学院に向かってくれ。ホルマ馬車の準備を」


「わかりました」


こうして私は、動かない中年男性と美女を置いたまま、医学院に向かう事になった。


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