第13話 王都へ

 村に見たことも無い立派な馬車が2台もやって来た。

馬に乗った騎士も4騎で馬車の前後を守っていた。


 ニックさんが馬車を見て

「先頭が、おそらく公爵家の馬車。2台目は王都医学院の馬車ですね」

 と教えてくれた。


 1台目の馬車からは立派な鎧の男の人ときれいな服を着た女の人が降りてきた。

2台目の馬車からは前世のスーツに似た服を着た豊かな髪をキッチリと纏めた女性が現れた。


「医学院のマゼッタ教官だ、俺達の指導教官だよ」


 鎧の男の人が文書を出して読み上げる。

「私は近衛騎士団のギルニア・ダイス、こちらはセラメル・ゼフタリア。


 これより勅命を告げる。

 バンダル王国 国王アグライト・バンダルの命により 

王国直轄領ニミグラ村ポジャカを

王都に召喚するものである。現在制作中の『青の雫』作成は中止し。

この馬車に乗り王都に向かうように。

また、ポジャカの王都での宿泊はホーバック・ナックが担当するものとする。」


 王様が私を王都に呼び出しか? 王様、青い髪でも見たいのかな。

 まあ、ホーバックさんの所に泊まるとか説明が詳しい所に気を使っている様子が伺えるな。


  私は手を上げて「私がポジャカです」と声を上げる。


 「お父さん、お母さん、ちょっと王都に行ってきます」と両親に手を振った。


  騎士団の二人も目を丸くしている。

  マゼッタ教官が「ニック、マーシィ、お前たちも研修は一時中断だ

王都に帰還指示がでているすぐに荷物を纏めてこの馬車に乗れ」「「はい」」


  ニックとマーシィが荷物を纏めている間に、

 村で私のいない間の作業を指示しておかないと。


「ジリウスさん、すみません私の代わりに、週1度のお供えをお願いします」

「おう、まかせとけ」


「村長、樹液がもったいないので3日分の樹液を煮詰めて1つの壺に纏めてください。とりあえず壺5個15日分、蓋には詰めた日付を入れておいてください。

それ以上の樹液は破棄でお願いします。」

「わかった、壺に余裕があったらもう少しまとめておくよ」


「ジル、もしジャンガが樹液を集めた部屋に入ろうとしたら止めてくれる?  大人なら大丈夫なんだけど、子供には危険だと思うから」

「うん、わかった。まかせて」


 そうして馬車は直に出発した。王都に向かって。


 公爵家の馬車の中で

 「失礼いたしました。なにぶん立て込んでおりまして。

  ところで今回の召喚理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

  と切り出した。


   ギルニアさんが「すまない、我々も理由は聞かされていないのだ」


  「わかりました、では今後の予定をお聞かせ願えますか?」

   セラメルさんが苦笑している。


  「わかったわ、これから王都まで3日、途中の2つの町で宿を取ってあるわ。

   王都のホーバック家に送るまでが私たちの任務。

   おそらく、そこで王から呼ばれるのを待つ事になる。

   他に聞きたい事はある?」


  「そうですか、王都はどれ位の広さがあるんでしょうか? 人口は? 

   貨幣の種類と単位もお願いします。

   王立図書館があると聞きましたが、

   一般人が使える図書館はあるのでしょうか?

   王都の他の国との交易はしているのですか?・・・・・」


   

   王立医学院専用馬車内

   【ニック】

  「ニック、マーシィ、あの少年はあの様な考え無しな言動をする子供なのか?」

   教官の質問に俺はマーシィと顔を合わせて笑ってしまった。


  「すべて計算ですよあれ」「全部わかっていてやってますね」

  「どういう事だ?」


  「いえ、勅命である以上、断る選択肢は無いでしょう。

   迂闊に騒いで大人達がポジャカを助けようとか考えても困りますし。

   勅命に宿泊場所まで指定なんて気をつかわれていたのも読み取れますし」


  「あの少年は8歳だろ。そんな事を考えていたというのか?」

  「最低限、それ位は考えています。それ以上は俺には理解できません」


  「なんなんだ、それは?」

  「教官、失礼ですが。ポジャカの事を子供として考えてはいけません。

   私は当初8歳の子供に習う魔法なのだから感覚的なものだと思っていました。

   しかし、実際は実演された魔法は見ても理解できず。

   彼の習得方法をトレースする事でやっと理解しました。

   あの習得方法はそのまま医学院で利用できます」


  「すまないニック、その言い方だとまるで君は、

   あの魔法を習得した様に聞こえるのが?」

  「私もマーシィも講習3日目には発動に成功しました」

  「なんだと、そんなに簡単に習得できるのか?」

  「あの恐ろしく効率のいい講習法なら、発動は可能です」

  「あの子供がそんな講習法を使うのか? どうも信じられない」


  「あの、教官」

  「なんだね?」

  「ポジャカ君に確認してからになりますが、私、医学院の池で講習法の実演できますよ」

  「なに、本当か?」

  「はい、途中の町で準備して医学院に帰ったら、お目に掛けます」

  「なにか準備が必要なのか?」

  「いえ、ポジャカ君は、そこにあった木の枝やヒモで自作してたんですが。

   その魔法の効果を確認できる画期的な仕掛けなので

   もう少し見栄えのいいものが良いかと思いまして」

  「よかろう、帰ったら是非見せてもらおう」

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