第12話 王都の異変

   バンダル王国王城 会議室


アグライト・バンダル国王、サバガム・ドニ宰相、リグナス・バラム公爵等の国の要人と王都医学院のサラバス学院長がテーブルに付いていた。


「サラバス学院長、現在王都にのみ起きている病気の原因は判らないのか?」


「宰相どの、発生しているのは王都だけ。患者の共通点は子供というだけ、

しいて言えば小さい子程早く発症している。症状は発熱と全身の痛み。

 感染経路も感染源も不明だ訳がわからん」


 リグナス公爵が赤い髪を掻きむしりながら「何か対応策は無いのか?」と嘆いている。


「解熱剤と痛み止めを処方しているが対処療法だ、

あと実験的に患者を王都から離してみたら病気の進行が止まった。

間違いなく原因は王都にある」


「王都を捨てろというのか?」公爵が嘆いている


「移動した先で、病気が発生しない根拠は無いよ。

後、症状の重い子に試しに『青の雫』を少量与えてみたら症状が緩和した」


「『青の雫』が効くのか?」


「公爵、勘違いしないでおくれ『青の雫』は症状を緩和しているだけ、時間稼ぎさ」


見事な赤い髪の王が口を開いた


「『青の雫』の備蓄は?」

「王都に500、各地に配布した備蓄分を回収すれば、おそらく500位だろうね」


「それで、どれくらいの期間対処できる?」

「1人に少量だからね、1月やそこらはもつだろう」

「生産状況は?」

「今の一日8個が限界だ」

「何とか数を増やす事は出来ないのですか?」宰相が口をはさむ

「無理だね。生産数を増やす為に人を送ったが作り方を習っている最中だ、

あんな未知で高度な魔法すぐに覚えらえないよ」


「サラバス学院長、確か『青の雫』を作っているのは青の神の加護を持った少年だったな?」

国王が尋ねる


「ああ、おそらくそうなんだろうね」


「青の神の加護を持つ者なら、この病の原因が判るだろうか?」


「絶対に辞めとくれ、『青の雫』の生産が止まる、

しかも8歳の子供を今の王都に呼ぶなんて正気とは思えない。

もし、あの子を失ったら『青の雫』は消えるし、

青の神だって暴れかねないんじゃないのかい?」


「それでも、原因が分からなければ王都を捨てる選択肢しか無い。

我の様な継承された加護では無く、青の神に授けられた加護ならば

何か見つけられるのではないか?」


「そこまで言うなら呼ぶがいいさ、ただ覚えておいておくれ

今ある『青の雫』は当時5歳だったあの子が創り出して、

それを毎日3年間作り溜めた物だ。

 失われた「青の神」もあの子が祀ってくれていた。

唯でさえもう大人の方の借りが大きすぎるんだ。

 それに、今回の件まで巻き込んだら、

あたしゃ、あの子のどうやって報いたら良いのか分からないよ」


「不甲斐ない大人ですまないな、出来るだけの事はしよう。

 青の神の加護を持った少年を王都に召喚する。これは国王命令だ」



 ホーバック邸


  【ホーバック】


  「ホーバック、ちょっと邪魔するよ」いきなりサラバス学院長がやって来た。

  「いきなり、どうされたのですか? 少々とりこんでいるのですが」

  「すまない、かなり急ぎの話だ」

  「わかりました、どうぞ。ホルマお茶の用意を頼む」


  応接室


  「それで、何の要件ですか」

  「王命が出た、ポジャカが召喚される」


   俺としたことが、その言葉を理解できなかった。


  「どういう事ですか? この時期に」

  「この時期だからだよ。青の神の加護を持った少年を王都に召喚せよってね」

  「『青の雫』の生産を止めてもですか?」

  「ああ、青の神の怒りをかってでもらしいよ」


  「そこまで酷いんですか、王都は?」

  「あの子のおかげで1月は持つだろうがね」

  「あの子にどこまで借りを作るつもりですか?」

  「国王には言っておいたよ、借りっぱなしで返せて無いってね」


  「それで、私に話とは?」

  「8歳の子供を連れてくるんだ。せめて顔を知っている奴の所にと思ってね」

  「家では孫娘が発症したんですが、ポジャカにうつったりしませんか?」

  「おそらく、関係無いだろう。原因はこの王都にある。

   可能なら症状が酷くなる前に王都から出した方が良い、

   治りはしないが進行は止まるようだ」


  「判りました、孫は移動させます。ポジャカの事もまかせてください」

  「すまないが頼むよ」

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