第11話 ポジャカの魔法教室

 私はニックさんとマーシィさんに教える事になったが、

この魔法をどうやって教えるかを決めかねていた。


色々口で説明してはみたが、やはり通じない。

それで、自分がこの魔法を作った状況をトレースしてもらう事にした。


まず、湖で水を生成して湖に打ち込み、

自分の作った水と湖の水の違いを感じようとしてもらう。


「ポジャカ君、違いは判りません」「判りません」


「それで、大丈夫です。次に湖の中の水を動かすイメージで動かしてみてください」


「わかりました、やってみます」「やってみます」


 水面にさざ波が立ち。水が動いているのが判る。


「水を動かす時は、どんなイメージですか?」

「イメージですか?なんとなくです」「わかりません」


「では、手で水を持って動かしているイメージを持ってください」

「持って動かすですか?やってみます」「やってみる」


  水は動いているな


「自分では、出来ていると思いますがどうですか?」「やってると思う」

「では、水を前後左右では無く下に、湖の底に向かって動かせますか?」

「やってみます」「やってみる」


 ニックさんが、あれ?っという顔をしている。


「恐らく、湖の底に当たって水が跳ね返りました」「戻ってきました」


「これ、目で見てないのに魔法の感覚で湖の底が判りましたね?」

「はい、そうです」「はい」


「今度は、これを左右に繰り返して、水の中に何か無いか感じて見てください」

「はい、やってみます「「やってみます」


 しばらく、続けていると。またニックさんが、あれ?っという顔をしている。


「何か小さい動く物があるのを感じます」


 それを聞いて、マーシィも「あっ」と声を上げる。


「はい、恐らく魚だと思います。お疲れ様でした、今日はこれくらいにしましょう」


「お疲れさまでした」「お疲れでした」


 


 【ニック】


 すごい、魔法にこんな使い方があるなんて。

 1回目の講義では理解できなくてダメかと思ったけど。


 今日の講義は手ごたえがあった。

 しかし、この訓練、水属性よりも風属性の方が覚えた時の利点が多そうだな。




 翌日、いつもの日課の後に、講義を始める。

昨日の続きで湖で水を動かして水の中の様子を魔法を使って感じてもらう。


「湖の底の形や底の泥の感触まで分かってきました。

 魚の形ももう少しでわかりそうです」


「うん、わかりそう」


 そうして、しばらく続けていると。


「出来ました、魚の形と大体の大きさも判ります」「すごい、魚泳いでる」


「次は、1匹の魚に集中して、魚の色や柄が判らないか試してもらえますか?」

「色や柄ですか?」「・・・・」


 しばらく試していたが


「すみません、色と柄はわかりません」「見えない」

「いえ、私が試したことを一通りやってもらってますので、

 出来なくて問題ありません。少し休憩しててください」


 そういって、私は次の準備をする。

 ドミの実、水気は多いがニガイので人は食べないこれを2個用意する。


 木の枝とヒモを使って即席の天秤を作る。


 枝の両端からヒモをたらしてそれぞれドミの実を括り付ける。 


 枝の中央のバランスをみて、重さの釣り合う所にヒモを括り付けて支点にした。


 支点に括り付けたヒモの端を近くの木の枝に括って吊り下げる。


「ポジャカ君、これは何ですか?」

「ニックさん、今、ドミの実の重さで左右のつり合いが取れてますね?」

「そうですね」

「では、ニックさん右側のドミの実をさっきの様に魔法で見てもらえます?」

「さっきの1匹の魚に集中した感じですね、見えました」

  

 ニックさんは目を閉じて、ドミの実を感じようとしている。


「今ニックさんが見えているのはドミの実の中の水です。

これを今の場所から外に動かしてみてもらえますか?」

「はい、やってみます」


 目をつぶったまま、動きをイメージしたのだろう

 その時、ドミの実の天秤が左が下がって右が上がった。


「ニックさん、目を開けてみてください」

「あれ? 傾きが付いている」

「右のドミの実は水が抜けて軽くなりました。その結果重い左側に傾きました、成功です」


 同じ事をマーシィさんのもやってもらう。こちらも問題なく成功した。



 【ニック】

 成功した事にももちろん驚いたけど、講習の方法が堅実すぎる。

 これこのまま医学院に持って行っても使えるよね。


 魔法の僅かな効果を仕掛けを使って、はっきりと視覚で判る様にする?


 ・・・・・・ポジャカ君、君8歳だよね。

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