第6話 嵐
ホーバックさんが帰ってから、間もないある日のこと、
いつものように湖に来てみると西の方に真っ黒な雲が見えた。
「雨がくるのか、早く帰らないといけないな」
家に帰りついた頃には雨が降り出した。
「雨がふってきたね」お母さんに拭いてもらう。
風も出てきた。お父さんが帰って来た。
「もしかして嵐がくるかもしれない。ポジャカ、家から出ちゃだめだぞ」
「はい、家にいます」
それから長い時間、家に強い雨と風が叩きつけられた。
家が揺れとても眠れそうになかったが、気が付けば眠ってしまっていた。
翌朝には、昨日の天気が嘘のように晴れている。
お父さんは夜が明けるとすぐに畑の様子を見に出かけて行った。
しばらくして、お父さんが青い顔をして帰って来た。
「大変だ、ジリウスの畑が流された」
お母さんと一緒に外に出る。
ジリウスさんの畑は
その土で畑は埋まっている。
他の畑も河の水が流れ込んで、
皆、自分の畑から水を掻きだすのに掛かりきりだ。
お父さんも、自分の畑から桶で水を掻きだしている。
ジリウスさんとメリムさんが自分の畑のあった所に
膝をついて動けないでいる。
これは、個人がどうこうできる土の量じゃ無いな。
村長が人を集めて話をしている。
「ある程度、自分の畑の水の排水が出来たら堤の修復にかかってほしい。
堤を修復しないと次は少しの雨でまた畑が水に浸かってしまう。
ジリウスの畑の修復はその後だ」
私は、お母さんに手を引かれて帰っていった。
その後、堤の修復には10日が費やされた。
ある日、いつもの岩の上に樹液を供えて祈っていると。
「ポジャカ」と泣いているジャンガに声を掛けられた。
「おねえちゃんが居なくなる」泣きながら、そう告げられた。
ジャンガの話を1つずつ根気よく聞く、
こちらの質問に対する答えはほとんど「わからない」だったが。
ジリウスさんの畑の復旧作業はまだ始まっていない。
これから収穫期に入るのでおそらく復旧には人数を裂けない。
村長が納税官に掛け合い、ジリウスさんの畑に関しては今年納税免除となった。
しかし、ウチを含めて他の村人の水に浸かった畑についての減額措置は無かった。
ジリウスさんの所の税金は免除になったが、収穫物は埋まってしまい収入は無い。
他の畑も水に浸かって減収が予想されるが税は例年通り納めなければならない。
収穫期の後で、村の協力を受けて畑を復旧できる頃には
季節は、もう冬になっているだろう。
それまで、無収入で家族4人が生活できるかどうか、
春に種もみを買う事も難しい。
それでジルを街に働きに出す話が出ているらしい。
いや、ジルってまだ10歳だろう。いくらなんでも
おそらく、そこまでの状況と言う事か。
泣きじゃくるジャンガの姿、おそらくジルも家で泣いているのだろうな。
ああ、子供が泣いているのはツライな。
ジリウスさんの所が家族で冬を越せるような収入源を作らなければならないか。
8歳児には、いささか難易度が高い問題だな。
「ポジャカ、すこし話があるんだが良いかね?」
そんな時に、ホーバックさんが現れた。
「ホーバックさん、どうしました? 確か来られるのは来年の予定では?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます