第4話 樹液
私は朝から桶と縄と
まずは桶を湖でよく洗う。
何事もトライ&エラーだ。
次になるべく人目につかない場所のネバネバの樹を探す。
もしジャンガがコレを見つけたら安全を確認する前に口に入れかねない。
樹の幹に特徴があるので、すぐに見つかった。
幹の地上1mほどの所に小刀で横向きに刻み目を入れてみると
ジャンガが言った通り刻み目からネバネバが出てくる。
手と小刀についたネバネバを魔法で出した水で洗い落としてから、
刻み目の下に桶を縄でくくり付けた。
近くにあった大きな葉を使って、樹液が桶に入る様に通路を作った。
「さて、これで準備はOK、明日はどうなってるかな」
成功しても失敗しても実験は楽しいな。
そして翌朝、ワクワクしながら森に入る。
桶の所に行ってみると桶には半分ほどの樹液が溜まっていた。
「おおすごい、大体4Lくらいかな?」
樹液に指を入れてなめてみる、僅かに甘さを感じる。
「この身体は甘いものに慣れてないからか、樹液が思ったよりも甘く感じるのかな」
確か、前世のメープルシロップは樹液を40倍に煮詰めてるはず、
この樹液から水を抜いて大体100ccにすれば40倍だよな。
魔法で水分を外に出す。
「神の聖名みなにおいて、水よ動け」
髪が青く輝き、桶の底に濃い琥珀色の液体が残った。
「これで40倍のはず」
指を入れて恐る恐るなめてみる。
「あっま~」
暴力的な甘さが口の中に広がる、ダメだこれ甘すぎる。
少しづつ水を戻しながら魔法で撹拌する、
味見しながら20倍くらいで止めた。
桶の中に残った20倍濃縮液を見ながら考えた。
さて、思い付きで作ったものの・・・コレどうしようか?
さすがに持っては帰れない。
それに、私が明日体調を崩している可能性も無い訳では無い。
自分の青く変わった髪を見て、ふと、あの巨大な青い蛇を思い出した。
大きくへこんだ形の葉っぱに桶の樹液を入れて、
湖のほとりにある平たい大きな岩の上に即席の葉っぱのコップを置く。
前世の習慣で両手を合わせながら
「どうぞお納めください」と祈った。
桶を洗って湖から離れる時に何か気配が動いた気がした。
同じように桶を仕掛けて家に帰る。
さて、次の問題点は作った濃縮樹液をどうやって保管するかだな。
家に帰りついた私は・・・
「お母さん、使って無い壺ある?」
とりあえず、お母さんに頼った。
出してくれた壺はおそらく8L位の大きさだと思う。
私がかろうじて持ち上げる事は出来たので魔法で洗って乾燥させておこう。
後は、森から濃縮樹液を運ぶ方法だが5歳の少年でも可能な良い方法を思いついた。
「どうせ、すぐには口に入れないんだから、とことん濃縮してみよう」
やってみたら4Lの樹液は・・・・・
直径5cm程コインに似た半透明の物質になった。
光沢のある濃い茶色が実にキレイだ・・・が、コレなら袋で良かった。
「お母さん、ごめんなさい。壺は要らなかったかもしれない」
そう呟いて、それでも、せっかくなので壺に入れておく。
壺の中に落ちたコインはカランと乾いた音を立てた。
両親には私の宝物なので、触らないようにお願いした。
後日、近所の家でも使って無い桶をもらい受けて、
毎日3個の濃縮樹液のコインが手に入る様になっていた。
私も何度か飲んでみたが体調に異変はないようだ。
しかし村の皆に振る舞うにも流通させるにも、もっと数が欲しいな。
とりあえずあの壺が一杯になるまで頑張ってみることにしよう。
ちなみに、岩の上に置いたコップの樹液は気が付いたら無くなっていた。
せっかくなので、ゲンを担いで週に1度はコップの樹液を供えて手を合わせる。
そうして壺にコインを溜める生活を続けて、いつしか私は8歳になっていた。
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