第3話 魔法

私は今、街の教会に魔法の習いに来ている。

基本的に魔法は同じ属性の大人が教えるのだが、

あいにく村には水属性の人間は居ない。


その為、教会から指定された、その日に

私は母と街に来て水属性の使い方を習っている。


私の青い髪は目立つので頭に布を巻いて隠している。

近隣の街や村の水属性の子供を集めても3人だけ。

私以外は2人共女の子のようだ。

どちらも母親が付いて来ているが、どちらの親の顔も曇っている。

教師役の男性も、あまり熱心ではないようだ。


型どおりの授業を受ける。

それで、水属性について分かったことは。


詠唱は

「神の聖名みなにおいて、水よ有れ」で水を出すことが出来る。


「神の聖名みなにおいて、水よ動け」で水を動かす事が出来る。


なんと、この2つだけ・・・・


練習すれば、大人が棒で殴る位の威力が出る。

飲んでも大丈夫、火事などの時には役に立つ。

これぐらいだった。


実際に詠唱してみる。

「神の聖名みなにおいて、水よ有れ」と唱えて、

手をかざすと手の平周辺の空間から水がわき出して塊を作る。

 他の2人の少女よりは大きい塊が出来ているみたいだ。


 それを見た1人の少女の親が

「マリイ、あなたも真面目に練習しなさい」と注意している。


 もう一人の少女の親にいたっては

「何言ってんだい、どうせ水属性だろ。クマリさっさと終わらせて帰るよ」

と実に投げやりだ。


そうか、亜麻色の長い髪の子がマリイで、紺色の短い髪の子がクマリか、

まあ今後会う事は無いだろうがね。


「水の属性魔法で出来る事は、水を生み出すことと、

その水を動かすことです。練習を重ねることで、

水の量を増やしたり動かす速度を早くすることが出来ます」


男性の説明はこれで終わった。


家に帰ってから、湖で魔法を練習してみる。


教師の言葉を思い出す。

『水の属性魔法で出来る事は、

水を生み出すことと、

その水を動かすことです。』


 よし、とりあえず色々やってみよう。

 水を作って、湖に放り込んでみる。

 放り込んだ水も動かせるのかな?

 やってみたが・・・・


うん、の区別がつかない。


意識すると湖の水を動かして、

わずかに流れを作ることができた。


あれ? なんか視界が眩しいぞ。


何か光る物でも在るのか周囲を見回すと、

視界に青く光る物が見えた・・・私の髪だ。


どうやら、魔法を使うと私の髪が青く発光するみたいだな、

教会でもおそらく布の下で光ってたんだろう。

これは・・・・目立つ。

人前で布を外して魔法は使えないな。


眩しさに目を閉じて魔法を使ってみると、

私は目を閉じた状態でも

水の動きを感じることが出来ている事に気が付いた。


今度は湖の中の水を大きく動かしてみる、

水以外の湖の底や中の生き物の形がなんとなく判ってくる。


目隠しをして、水の中に何本も手を入れて

手探りで何か無いか探しているイメージだ。


動かせる範囲は自分を中心に5m位だな、

その距離なら水の中に居る生き物が大体判る。


魚は大きさは分かるけど、色や模様は分からない。


30cmくらいの大きさの魚1匹に意識を集中してみる、

これで色がわからないかな?

わからなかったが、その魚の中の水を感じ取った。


「そう言えば、人間だって70%が水だった」


 何気なく魚の中の水を動かしてみた。

 あれ? 魚は水面に浮いてきた。


 水流を動かして、その魚を手元に引き寄せる。

 死んでいるな、無駄な殺生をしてしまった。


今後、生き物に使うのは止めておこう。

誰だ、水魔法が戦闘に向かないなんて言い出したのは。

これ即死魔法じゃないか。


今度は、湖に落ちていた木の枝を手に持って、

枝の中の水を動かして、枝の外に出してみる。


パキッ うん、よく乾燥してるな、

水魔法で乾燥ができるとは知らなかった。


これで雨の日でも洗濯物が乾燥できる、

お母さんは大喜びだ。


今日の魔法の練習を終えて、湖から離れて家へと帰る。


森を通るとジャンガと背比べをした樹と

すぐ近くのネバネバが出る樹が見える。


もしかして、あの樹?

前世の記憶がちょっと引っかかった気がする。

もしかしたら何か出来るかもしれない。


 家に帰りついた私はお母さんに声を掛けた

「お母さん、うちに使って無い桶ある?」




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