青の雫の章

第1話 ポジャカ

私は小さい時から少し変な子供だった。


いや、もちろん容姿みための話では無い。


普通に泣いたし笑ったし食べたし飲んだし、出すものは出した。


でも、なんだろう?


お父さんが農作業するのを、お母さんが料理を作るのを、じっと見ていた。


今、考えると何か違和感を感じていたんだろう。


そして3歳の時、自分の中に断片的な昔の記憶があることに気が付いた。


「神様の消し忘れかな」


別に自分の中に有用な知識が有ったわけでは無い。


あったのはココとは違う世界で大人だったという記憶くらいだ。


でも、その記憶を持って、年若い両親が働いているのを見た時。

私の中に生まれた考えは、「この夫婦わかものたちを守らなければ」だった。

自分が夫婦に守られるべき存在なのは十分承知している。

それでも、まだぎこちない手つきで必死に働いている2人を見ていると

(気持ちは)年長者として応援したくなるのだ。

そんな事を考えながら、日々の生活は続いて行った。


父の名前はポグナス、母の名前はマイラ、そして私はポジャカという名前だった。


さて・・・うちには、時々ご近所さんが遊びに来る。

そのなかでも同じくらいの子供がいる夫婦が度々遊びに来た。

ジリウスとメルムという年若い夫婦だ。


私と同じ年のジャンガと私より2歳上の姉のジルを連れてきた。

彼らはよく似た灰色の髪をしていた。


なんでも、今日は姉のジルを連れて教会に行ってきたらしい。

5歳になると決められた日に街の教会に行くのが国の決まりなのだそうだ。

前世の七五三みたいなものか?

今回、ジルは教会で火の属性だと判定されたらしい。

将来有望だとジリウスさんがうれしそうだった。


そう、この世界にはなんと魔法がある。

個人に適性があり、5歳で判定される。

数少ない聖と光属性の子供は国の管理になって専門の教育を受けるのだそうだ。

もっとも希少過ぎて、この村では未だ出た事が無いらしい。


火と風は将来を軍で期待される。

土は砦や建物の建設などに重用される。


ただ、あいにく水属性だけは、この水の豊富なこの国ではハズレ扱いだそうだ。

そのせいかは分からないが、水の属性を持つ子供自体少ないらしい。

家の父と母も土属性だということだ。


彼らが遊びに来ると、どちらの両親も私とジャンガを遊ばせようとする。

しかし、活発に動き回るジャンガと一緒に遊ぶのは中々キツイ、

よって、ジャンガのスキを見つけてはジルの所に逃げて行った。


この村の北側には森があり、その奥にキレイな水を湛えた湖がある。

村長むらおさの話では、湖の中央の小島にほこらがあり、湖の神様が祭られていると言う事だ。

ただ、今では何の神様が祭られているのか分からなくなっているらしい。

過去には湖の東側に村があり、そこの村長むらおさほこらの祭司を兼ねていたが、

疫病で村自体が無くなったのだそうだ。


困ったことに、ジャンガは冒険と称して、森や湖に行きたがる。

もっと困ったことに、私を連れて行こうとする。

特に危険な動物は居ないがそれでも結構な運動だ、出来れば勘弁願いたい。


私が4歳になってしばらくして、夏も終わろうかという時。

ジャンガは私の手を引っ張って、湖に連れて行った。


ジャンガは、この時の事を未だに後悔しているらしい。

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