すごくリアリティの感じる近未来。将来きっと、こういうシステムが出来上がって、人はガジェットを駆使して生活を便利に、そして楽しめるようになるのであろうと思える要素が満載。
導入は「なにかありそうな気配はするけど、それよりこの近未来のシステム、ワクワクする!」という感じなんですよね。主人公もそんな感じで。
だけど徐々に事件の香りが漂いはじめ、ミステリー度が跳ね上がって行く……。
感覚過敏気味で直感力が冴える主人公の真見は、気弱でおどおどしたところが多いのだけど、徐々に勇気を振り絞って行動し、マイナスのように感じていた特性を長所に変えて成長していく。島で出会った友人たちとの友情も見どころでしょうか。
近未来だからこそのガジェット、システムの存在が深く絡むミステリー。誰が敵なのか味方なのかの緊張感も。
話が進むほどに面白さが増す一作です。
主人公、神野真見(かんのまみ)は五感が鋭敏で直感も鋭い少女。
その特性ゆえの悩みが生活にも表れており、音が聞こえすぎるため常にイヤホンをしています。
こうした細かな描写が、設定だけでなく生きた人物であることを実感させてくれます。
真見が近未来都市化されている命島(めいじま)に父親の浮気の調査を母親から頼まれ(ここも面白い設定!!)、フェリーで訪れるところから物語は始まります。
しかも、いきなり冒頭で事件が起き、そこから興味を引かれるなどストーリーも練られていることが分かります。
本作の特筆すべき点は、舞台が自然溢れる島でありながら近未来的なSFの世界観だということです。
美しい海の描写がある反面、買い物は顔認証で金銭が自動的に引き落としされる、バーチャル世界と繋がることのできるゲームが開発され、それが重要な存在になるなど作りこまれたSFの世界を堪能することができます。
島で連続する怪事件と命島を近代化する企業セル社の陰謀、真見の父親の浮気調査。
緻密に考えられた人物設定、陰謀を解き明かしていくミステリーの骨組み、物語を彩るSF要素など見所満載の本作を読んで楽しめること間違い無しです!
とてもおもしろく、一気読みしました!
風通しのよい文章や語りが心地よく、すっと世界に入れました。
テクノロジーの発展にともなう社会問題などへの洞察を感じましたが、そういった深い要素もとても読みやすく楽しめました。
この気取りのない、明るいタッチがまず非常に心地よいのです。
また、SFガジェットもふんだんに活用され、SFとしても楽しめました。
作者様の作品概要にある「やがてセル社はバーチャル世界と繋がることのできるゲーム『My ISLAND』を開発。陰謀が動き出す。」と書かれている、テクノロジーの描写が秀逸。
このVR(AR)テクノロジーが作品の鍵を握る展開が、意外性や夢にあふれています。
それでいて、ミステリーとしてもしっかりと構築されています。
伏線回収や諸々、しっかりミステリーしています。
作者様のストーリーのコントロール力、さすがです。
総体として社会問題と最新テクノロジーを土台にしたライトなミステリーとして、完成度が高いと思います。
こういったものをアニメ化してほしいです!