第4話 セルリアン(後編)
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家に帰る前に、私は中学校の方に寄り道した。
(いつもは一人だったけど、ロゼがいるって考えると嬉しいな。)
そうこうしていると、ロゼともう一人、きれいな水色の髪の女の子が一緒にやってきた。
「あ、牡丹さーん!こっちにまで来てくれていたんですね。」
「この人が...姉様の選んだヒト...」
女の子はとてもかわいい声をしていた。そして私は、おそらくロゼのことを「姉様」と呼んでいることが気になった。
「うん、初めての中学校お疲れ様。...えっと、そっちの子は?」
「ああ、それも含めて説明しますね。では、セルリアン。自己紹介お願いできますか?」
セルリアン、と呼ばれた少女は、少し表情をこわばらせながら言った。
「あ、あたしは、セルリアン・キルーリア!型名・エリアを
......いろいろと気になるところはあるが、とりあえず一つずつ聞くことにした。
「え、えっと...セルリアン?あなたは、ロゼと同じ人形...であってるよね?」
「当たり前でしょ。あたしが人間なわけ無いじゃない。」
ロゼを呼ぶときはとっても愛情がこもっているような感じがするのに、私を相手にするときは扱いが雑に見えた。
「それで...<アクエリアス>というのは地域名だよね。私が知ってるのはジェミニとキャンサーだけだったけど...」
「はい、アクエリアスは第二の地域で、私たちのジェミニからは少し離れたところにあります。」
「あ、あと、なんでセルリアンはロゼのことを”姉様”って呼んでるの?」
今のところ一番気になっていたことを聞くと、セルリアンは急に私のほうに近づいてきた。
「...あのねぇ、そんなの一つに決まっているでしょ?」
「と、というと...?」
「そんなの、ロゼリア姉様が、ミリアーの中で一番優秀ですごくて天才な人形だからに決まってるでしょ!?」
今話しながらでもだいぶ強気なところがある子だなとは思ってたけど、級に近づいてきてロゼのいいところを長々と語りだす子だとは思わなかった。(こうして心の中で考えている今もロゼのいいところを語っている。)
「......この子、なぜか昔から私のことを気に入ってくれてて。私のことになるとちょっと感情が暴走するというか...」
そんな子がいるとは思わなかった。しかし、現在進行形でそんな姿を見せられては、納得せざるを得ない。
「セルリアン、そこまで。フューシャがかわいそうでしょう。」
「う...すみません。」
(ロゼに言われると弱いのね。)
とりあえずセルリアンのロゼ愛が収まってくれたところで、気を取り直して本題の話に戻ることにした。
「フューシャ。単刀直入に言うと、セルリアンにも事件の調査を手伝ってもらおうと思います。」
「え、いいの...?」
「ええ。こっちも調べたいことがあるから、そのついでよ。何より、それで姉様のお役に立てるなら、やらないという選択肢はないわよ。」
さも当たり前のように手伝うと言ってくれて、正直驚くしかなかった。
(いくらロゼのことを尊敬していて役に立ちたいと言っても、結局私のためになるだけなんだから、手伝ってくれないと思っていたんだけど...)
どうやら、人形はみんないい人ばかりなのかもしれない。
ロゼも、エルムも、セルリアンも、タイプは違えどみんな心優しいところがあるとわかった。
「セルリアンが協力してくれるおかげで、フューシャの協力者は3人ということになります。それも、フューシャの一番近くで捜査する私、ミリアーから手伝ってくれるエルム、そして現実世界での協力者であるセルリアン。ちょうどいいバランスになります。」
「人形はヒトよりも賢いし、力を使ってできることも多いから、これ以上協力者を探すということはしなくてもいいと思うわ。」
(二人が言うように、ここからは事件の捜査を本格的にやったほうがいいわね。)
そう決意した私は、二人にお願いをすることにした。
「じゃあ、まずロゼ。」
「はい。」
「あなたには、私と一緒に現地調査をしたり、事情徴収をしたりしましょう。私もなるべく頑張るけど、人形として、一緒に生活しているヒトとして、一番近くで手伝ってもらいたいな。」
ロゼには、少し違うところがあるけど、私の側近のような役割をしてほしかった。ロゼはエルムやセルリアンが言っていたようにいろいろな力を使うことができるらしい。その力を役立ててほしいのと、いろいろな人に会う機会が多いため、ロゼ自身の感情の練習になると思ったのだ。
「そして、セルリアン。」
「え、ええ。」
「セルリアンにはロゼが学校にいる間に協力してあげてほしいの。というか、主に学校にいるときね。」
セルリアンは学校での協力をお願いしたかった。家では私とロゼで基本十分だし、だったら学校での調査に力を入れてほしかった。
「(こいつ、あたしたちみたいなヒト以外の者にも負けないくらいしっかり意見を言えるのね...)...わかったわ。姉様に直接力になれると聞けば、全力でやらない理由はないわ!」
「まったく、セルリアンは......あ、エルムはどうするのです?」
「そうね、エルムには、主にミリアーでの調査に期待するわ。」
エルムはまだ一緒に暮らす人間が見つかっていないそうなので、当分はミリアーで生活するだろう。そこで、ミリアーじゃないとできないようなことをやってもらいたかった。
「そこで聞きたいんだけど、人形が持ってる力ってどんなものなの?そこをはっきりさせたいのだけど。」
「そうですね。ではまず、色と力について説明しましょう。」
そういってロゼは、なぜか持っているCDを使って説明しだした。
「このCDは、今『カラー:オレンジ』で作り出したものです。私たちが使う力は、総合して『カラー:
「各地域ごとに基本色が決まっていて、あたしたち<アクエリアス>なら青、姉様の<ジェミニ>なら赤、エルムの<キャンサー>なら緑よ。」
各地域にいる人形は、定められた基本色の力は全員扱えるのだという。ロゼが人形の中でも特に優秀だと言われているのは、この扱える力が多いという話はエルムから聞いていた。それは基本色以外にも扱える色がたくさんあるということで、このような力の才能がすごい人形はなかなか生み出されないとのこと。
「色ごとに決まった力というのは、その色の持つイメージによって、使える技が決まります。赤は「現象変化」、青は「精神干渉」、緑は「自然生成」などがあります。これはミリアーの地域の数の分あるので、全部で力の種類は12種類あります。」
...青は精神干渉ができる力だということは、セルリアンは自分の力が(変な方向に)暴走して、ロゼをあんなに尊敬するようになったのかな?...などとどうでもいいことを考えていると、それに気づいたのかセルリアンがこちらをにらんできた。
「とにかく、色と力の説明はこんなところです。」
ロゼの大まかな説明が終わったところで、私はエルムの細かい役割を考えた。
「『カラー:グリーン』の「自然生成」自然生成って、具体的にどういうことができるの?」
「「自然生成」は、炎や風などの自然に関係するものを力を使って発生させることができます。しっかり力のトレーニングをすれば、さらに大規模の自然物を作り出すことも可能となります。」
自然というと、炎や風のほかにも、氷や土なども生成可能ということだろう。大規模というと、おそらくスコールなどの天候も生成可能になるということだろう。
「うーん、エルムにはミリアーでの情報収集をお願いしたかったのだけど、力的に難しいのかな?」
「そんな事も無いわよ。確かに情報収集向きの力ではないけど、キャンサーの人形のいいところは、どの地域の人形よりも信頼度が高いということだもの。ミリアー内で情報を探るなら、キャンサーの人形に任せるのが正解だわ。」
...どうやら、セルリアンもエルムのことは信頼しているらしい。
「...なら、エルムにはミリアーのいろいろな人形からの情報収集をお願いするわ。現実世界のことがミリアーにどれくらい伝わっているかわからないけど、二人のことを見ている感じ、ミリアーにはいろいろな情報があると思うし。」
私がそういうと、セルリアンは満足そうな顔をして、ロゼもわかりにくいけど、納得しているような顔をしていると思う。
「そうと決まれば、あたしがミリアーに行ってエルムに伝えに行ってあげる!ちょうどミリアーへの用事もあるし。」
すごくやる気があるのか、明るい声で言った。
「本当?ならお願いするわ。」
「ええ、任せなさいよね!」
セルリアンがものすごいスピードで走っていくと、ロゼが急にため息をついた。
「はあ...あの子、アクエリアスの人形とキャンサーの人形の中が悪いことを忘れているのかしら。」
「え、さっきキャンサーの人形は信頼度が高いって...」
「確かに信頼度は高いですが、仲が良いとは言っていません。アクエリアスとキャンサーはなぜかそりが合わないようで...昔から苦労しているのです。」
ということはつまり.....
(せっかく協力者が増えて安心していたのに、協力者同士で喧嘩が頻繁に起きちゃうってこと!?)
「二人が喧嘩になったら、私その場を収められる地震ないよ!?」
「そうでしょうね、ですが私はセルリアンを止めることができますので。」
確かに、ロゼならセルリアンを止めることはできるだろう。だけど、エルムは…
「とりあえず、私たちもミリアーに行きますよ。こうしているうちにもセルリアンが喧嘩を吹っかけている可能性は十分にありますので。」
そうロゼに言われて、私たちはミリアーへと急ぐのだった。
パーフェクト・カラー・デコレーション エリカ @kalner
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