閑話25:離さない

【!注意!】

性的な表現が含まれます。性的な表現が苦手な方は、次のリンクでお戻りください。

※読み飛ばしても、本編を楽しむのに支障はありません。


【第632話:揚水機構(1)】

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【ムラタのむねあげっ! 目次】

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──────────





「ふふ、わたしだって、毎日大好きな鉄をたたくことができて、こうして毎晩、あなたにいたわってもらえます。ベッドでも、いっぱいかわいがっていただけます。わたしは冬まで待たなくても、いま、とってもしあわせですよ?」


 そう言ってしっぽを絡めてきたリトリィは、とろんとした目でキスをねだってきた。手に油を擦り込みながら、その求めに応えて、長い長い口づけを交わす。


 マイセルもフェルミも、既に二階の寝室に上がっている。チビたちも寝ている今、この家で起きているのは、おそらく俺たち二人だけだ。


 こうしていると、まだマイセルと出会う前、リトリィと二人きりでこの街に出てきたころを思い出す。彼女と初めて結ばれた夜、そしてそれからタガが外れたように愛し合うようなった、あの頃。


 それは、彼女も同じらしかった。月の光は、直接はここまで届かない。ただ、彼女の瞳が、窓からの月の明かりを受けてしっとりと濡れ輝いている。

 そっと、彼女が耳に口を寄せた。

 かすれる小さな声で、けれどはっきり、ほしいです、と、熱い吐息交じりの言葉。


 ここでか? そんな俺の無粋な──我ながら意地の悪い問いに、彼女は頬を膨らませ、けれどスカートをたくし上げて俺の膝の上に乗ってきたのだった。




「あなた……もっと、その……ゆっくり……」


 蜜が粘り、糸を引く音に、リトリィが首を振る。

 彼女の背後から胸を鷲掴みにして、奥をえぐる。


「おねがい、です……。あの子たち、起きちゃいます、よ……?」

「やめて欲しいのかい?」

「……そんな、いじわる、言わないで……ッ⁉」


 必死に声を噛み殺すリトリィに、俺は彼女を抱きしめ、さらに奥深くをえぐってやる。ソフトな腰づかいを望みながら、しかし俺のいたずらに合わせてより深く胎内に呑み込もうと絶妙な力加減で腰を振る彼女に、俺の中の嗜虐しぎゃく心が首をもたげてくる。


「どうした? あまり声を出すと、チビたちが起きるぞ?」

「……っ!」


 くなくなと首を振る彼女があいらしくていとおしくて、テーブルに突っ伏す彼女の背中に体を預けるようにして、右手で押しつぶされた胸をつかみ、左手で彼女の口を押さえると、さらに奥を突き上げた。


 悲鳴にならない悲鳴を上げ、首を振る彼女だが、だからといって身を離そうとするようなことはない。むしろ俺の動きに合わせようとする。


 ──ああ、どうして彼女は、こうも俺の望む彼女でいるのだろう。


 紺のワンピースドレスをまくり上げれば、金色のふわふわの毛に覆われた大きな尻。打ち付けてもマイセルのような軽快な音はならないが、たっぷりと溢れる蜜が周りの毛に絡み、湿ったような音がよく響く。


 ──これは夫としての義務なのだ。彼女が望んだことなのだ。


 体を起こし、重たげに揺れるふかふかしっぽをつかみ上げ引っ張ると、彼女がたまりかねたように短い悲鳴をあげ、そして自分の口を手でふさぐようにした。

 切なげにこちらを振り返るが、俺が意に介さず腰を叩きつけると、首を振りながら悲鳴を必死にこらえる。


「……リトリィ、そんなに声を出していると、本当にチビたちが起きるぞ?」


 暗い部屋の中でも、その目が大きく見開かれたのが、チビたちの方を見たのが、手に取るように分かる。

 ──ああ、可愛い。

 その可愛らしい姿を、もっと見せてくれ。


 彼女の体を引き起こす。

 ボタンを外し、上半身をさらけ出させ、まくりあげたワンピースの裾を彼女に咥えさせる。


 そのままチビたちの方に体を向けさせて後ろから突き上げると、くぐもった悲鳴とともに、まるで手で握られているかのように締め上げられた。


 本当に、君はいとおしい。

 俺の手の中で、羞恥に身を染めながら、悦びに体を打ち震わせ、あくまでも俺の期待に応えようとする。


 ああ、愛している、リトリィ。

 君が俺を望んでくれている限り、俺はけっして君の手を離さない。




「……無理はしていないか?」


 十分に互いの愛を交わし合ったあとのけだるい時間──

 リトリィを背中から包むように抱き、二人してソファーに体を横たえ、喉の下の白いふわふわの毛、そこに残る焦げ跡をなでながら、俺は聞いてみた。


「むりなんて……。わたしは、あなたのお役に立ちたいだけですから。それに、鉄を打つのは好きでやっていることですし」

「……そうか」


 彼女の喉の下のふかふか具合を堪能しながら、もう一方の手で、彼女の荒れた手をさする。


「でも、俺は心配で……」


 あの鉄火場で、火の粉を受けながら、鬼気迫る表情で、俺の言うことを受け入れず石炭を掻きだす彼女がフラッシュバックする。

 彼女は言った、あれは自分のわがままだったと。俺に褒めてもらいたいあまりに、やってしまったのだと。


 俺のためなら、たとえ俺と争うことになろうとも筋を貫こうとする彼女の、その一途な思いが、今回のあの姿に繋がった。


 つまり、彼女が鉄と関わり続ける限り、あのようなことは、また起こり得るのだ。

 彼女のやりたいようにやらせてやりたい、彼女が生き生きする環境を奪いたくないと思いつつ、彼女が身を危険にさらすようなことはしてほしくないとも思う。


 彼女のためを思うからこそ身を引いてほしいとも思うし、それは自分が安心を得たいだけの俺のわがままでしかないとも思う。


 彼女の望みは分かっているんだ。

 分かっているけれど不安になる。


「ありがとうございます、あなた」


 リトリィは、微笑みながら、喉の下をかく俺の手をぺろりとなめてみせた。


「でも、わたしはだいじょうぶです。あなたがわたしのそばにいてくださる──それが感じられるだけで、わたしはどこまでだって、がんばれるんですよ?」

「そうやってまた無茶をしそうだから、心配になるんだ」


 たまらず、彼女をこちらに振り向かせて抱きしめる。


「あなた……」


 彼女は、しばらく俺の腕の中に納まっていた。

 そして、俺を見上げて、微笑んだ。


「わたしは、あなたのリトリィです。あなたがわたしを望んでくださるかぎり、わたしはけっして、あなたのおそばを離れません。……あなたのお手元に、ありつづけます」


 まっすぐ俺の瞳を見上げてそう言った彼女を、俺はさらに強く抱きしめる。


「……ああ。俺はけっして君の手を離さない」




「あなたが望んでくださるかぎり、わたしはけっして、あなたの手を離しません」


 うん、助けて。


「ふふ、だめですよ。もう覚悟はできました。あなたの仔ができたとしたら今夜でしたって、もしあの子たちに見られても、胸を張ってそう言うことにします」


 いや、その、あんまり激しいと、傷口が開く恐れが万が一にもなきにしもあらずということで。


「さっき、あんなにも愛して下さったのは、なんだったのですか?」

「うん、いや、ごめんなさい」

「あやまっていただくことはないですよ?」


 そう言って、彼女は楽しそうに俺の上で腰をひねる。


「ふふ、そうやってがまんをしているあなたのお顔が、とってもかわいらしくて、わたし、だいすきです」

「いや、ほんとごめん。せめて二階に行こう、な?」

「いやです。せっかく二人きりなのですから。……そうだ、台所でいたしますか?」


 ……もう、どうにでもなれ。


「では、このまま続けますね? あと三回は、いただきますから♥」


 あっ……いや、あの、さすがに三回は厳しいのではないかと愚考する次第で……!

 てか、いまきゅっと締め上げましたね? 離す気が全くない強い意志を感じます。


「もうきめました。あと三回はいただきます♥」


 ……いや、ほんと、たすけて。



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