パンティー怖い

西川東

パンティー怖い

 最初に、読者の皆様に注意しなければならない。タイトルから察してもらえると思うが、今回は、犯罪がらみの話であり、人によっては生理的嫌悪感をおぼえる話である。




 かつて、様々な方に“お世話になっていた”Bさんの体験。




 Bさんが目をつけていた地区の団地、その1階のベランダに、堂々と洗濯物を干す住人が存在した。これがまた都合のいいことに、どうも住人は若い女性独り。格好の標的であった。




 日頃の見回りの成果もあり、その団地近辺の住人の行動パターン、監視カメラの設置場所などは、おおよそ把握していた。そのため、やすやすと目的の物を手に入れたという。


 その夜、Bさんは昼間に入手した戦利品を、ひとつひとつ並べて楽しんでいた。そのなかでも、ひと際きわどい一品が気に入り、文字通り“肌身離さず”にいたそうだ。この時点で、もう十分に気持ち悪いのだが、本題はその状態でダラダラ過ごしていたときのこと。




 普段通りトイレに入り、ズボンをおろして腰を下ろし、一息つく。


 そこで目が合った。




 自分の下ろしたズボンの中、そこに女の顔があった。


 あったという表現もおかしい。よく思い出してみると、その顔の寸法が合っていない。明らかに普通の頭の大きさを超え、足の間、ズボンの中いっぱいに女の目元が広がっていた。こちらを覗くその眼。その涙袋の部分が盛り上がっていて、どこか笑っている印象があった。


 そのまま目が横に細くなると、ズボンの中、腰元の方から厚ぼったい肉塊が零れ出て、そこからは真っ黒で大きな穴が広がり・・・。




(こいつ、喋りだすぞ)




 Bさんはそんな予感がして、着の身着のまま、叫び声をあげてトイレから飛び出た。


 足がもつれて転げまわり、なんとか部屋の壁際まで這いずって振り返る。


 そこには脱ぎ散らかされ、ぐちゃぐちゃになったズボンと女性用下着が床に転がっているだけだった。




 それからBさんは完全に足を洗った。


 足を洗った今でも、黒いTバックをみると吐きそうになるという。


「なんなのか全く分からない、警察よりも恐ろしいモノに目をつけられた」


 そんな感覚を再度思い知らされるから・・・とのことだ。

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パンティー怖い 西川東 @tosen_nishimoto

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