青春

ささやかな抵抗

潮の匂いに胸を高鳴らせ、少しスピードを上げる。

先程までは、学校をサボったことへの罪悪感などもあったが、そんなことはどうでも良くなっていた。

ただ何も考えずロードバイクを走らせることが楽しくて仕方なかった。

いつか見たアニメの主人公もこんな気持ちだったのかと、勝手に親近感を覚え、楽しさから自然と口角は上がった。


人も車も通らない、私だけが通る道。

誰にも邪魔されない、私だけの世界。


不意に視界が開け、全てを埋め尽くすほどの青が視界に飛び込んでくる。

__海だ。

長い道のりの末たどり着いた景色に、胸がいっぱいになった。少し行ったところでロードバイクを止め、浜に降りる。

砂が靴に入り込んできたが、そんなことはどうでもいい。

少しでもこの歓喜を味わいたくて、制服が濡れることも気にせず、海へと駆けた。

まだ冷たい水は全てを忘れさせてくれるようで気持ちが良かった。近くの自動販売機でスポーツドリンクを買い、それを片手にまた駆け回る。

正しく思い描いた“青春”だった。


そうして数時間。

満足して、切っていたスマホの電源を入れれば、義母ははからの大量の着信履歴が表示される。

そのうちの一つをタップし、耳に当てると、1コールも鳴り終わらないうちに、


すい!』


義母ははの、焦った声が聞こえた。

こんなに焦った声を聞いたのは初めてで、それほど心配されていたことにどこかで安堵した。


「ちょっとそこまで。もうすぐ帰るよ。お母さん。」



これが、私のささやかな抵抗と義母ははを初めて “母”と読んだ日だ。

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青春 @You_better

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