微睡
「すみません、僕そろそろ帰ります」
2人には申し訳ないが、夢の本屋に来るお客さんは死に近い人が来る。無理矢理呼びに来たということはかなり危ない状況なのかもしれない。
泰一が慌てて荷物を纏めると2人とも時計をみて驚いた顔をしていた。
「ん?あ、こんな時間か。泰一、俺も一緒に帰るよ」
「わー、もうこんな時間・・・!葵先生すみません!」
「いや、また話聞かせてよ」
「もちろんです!先輩すみません、こんな時間まで」
申し訳なさそうな顔をする水島に、レーヴに呼ばれなければもっと話をさせてやれたのにと申し訳なくなる。
「いや大丈夫。じゃあまたな」
「はい!」
水島は柴門さんと待ち合わせをしているようでそのままお店の前で見送りをしてくれた。
雄介はそんな水島に手を振って、泰一と一緒に歩き始める。
「水島さん凄いな。あれだけ読み込んでくれていると作家冥利につきるよ。良い作品作り続けないとな」
「そうですね」
「そういうわけでこれからもよろしく」
「はいはい」
水島と話をしてから作品を作る意欲が高まったのかいつになくやる気を出している。雄介と水島を会わせて良かった。
帰り道に次回作についての話をしているとあっという間に家の近くまできた。
「雄介先輩、僕店寄ってから帰るので」
「おー、わかった。またな」
「はい、お気をつけて」
雄介は片手を上げてマンションの中に消えていった。
泰一はその背中を見送った後、店のシャッターを開けて、中に入る。閉店しているので中に入ってからシャッターを閉めて、念のため入り口の鍵を閉めた。
さっきから頭がふらふらする。正直帰りの道のりでさえ、頭の中に靄がかかったようにぼーっとしてしまった。
ソファーに腰を掛けるとそれが合図のように視界が歪み、フェードアウトしていった。
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