ミステリー好きのきっかけ






「俺の母親が大のミステリー好きでな。部屋にある本棚は何とか殺人事件とか物騒なタイトルが多くて、子供心にちょっと怖かったんだ。でも何となくしり込みしていることを知られたくなくて小二の時母親に『この本棚の中で一番面白い本は何?』って聞いたら随分悩んだ後に綾辻行人の『十角館の殺人』を渡された」

「小二に『十角館の殺人』ですか・・・」



『十角館の殺人』は1987年に出版された綾辻行人のデビュー作で館シリーズ第一作目だ。

この作品で新本格ミステリーブームが巻き起こり、現在ではコミック化もされている。国内外、老若男女問わず人気の作品で、泰一が書店で働いていた頃も色んな層の客がこの本を求めてやってきたことを思い出す。ただ、読む内容は小学生向けではないと思うが・・・。



「ビックリだろ?とりあえず母親から受け取って読んでみたものの、わからない漢字も多いし、すっ飛ばしたところが結構あって内容全部理解はできなかったけど、でもなんか面白い!って思ったんだよな。で、『十角館の殺人』をちゃんと読みたいがために漢字勉強したりして母親は喜んでたな。でもまあ、さすがに館シリーズの続きを渡される前に江戸川乱歩の『少年探偵シリーズ』を渡されたけど」



江戸川乱歩の『少年探偵シリーズ』は少年少女向けの探偵小説だ。

第一作目に出てくる怪人二十面相がシリーズの中で暗躍し、探偵である明智小五郎やその助手小林少年と対峙することになる。

怪人二十面相は変装の達人でシリーズの中で何に変身するのか、読んでいる時はとても楽しみにしていた。それに血が嫌いというのもあって殺人のシーンがないのも安心できる。怪人二十面相と明智小五郎の智略を巡る戦いに幼い泰一は胸を躍らしていたことを思い出す。



「面白いですよね、『少年探偵シリーズ』」

「ああ。昔は小林くんみたいに少年探偵団作りたい!と思って仲良いやつで探偵団を作ったりしてたなあ・・・。まあ小説みたいに事件が起こるわけではないからパトロールと称して街を歩き回ったりしてるだけだったが楽しかったな」



話をしながら食べる雄介のご飯が美味しい。それもあってか会話も弾む。誰かの家でこんな風にご飯を食べるのは良いものだ。


ご飯を食べ終えると、今日の夜さっそく執筆のために使いたいと言われたので、閉店時間に来るように伝えた。


雄介の家を出て自分の家に帰る。

そろそろ仕事に行く用意をするかなと思った矢先に視界がぐらりと揺れた。


レーヴが呼んでる・・・。


床に倒れるわけにはいかないので、ふらふらしながらベットに辿り着き意識を手放した。









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