雄介先輩と朝食
翌朝
「おー、きたな」
「おはようございます」
昨日と同じ時間に行くと雄介の部屋から朝食の匂いがする。
中に入ると既に和食がテーブルの上に並んでいた。朝食はその日の気分で洋食か和食か決めるらしい。今日は和食気分だったとのことでラッキーだ。
テーブルの上には焼き魚、おひたし、味噌汁、梅干し、白ご飯が並んでいた。手を洗って席に着く。
「さ、食べようか」
「「いただきます」」
ご飯を食べていると、エンデにいる間に仕事が捗ったのでまた今度使わせてほしいと言われた。
「お客さんの邪魔にならない程度なら日中に居座っても構わないですけど…。良かったら閉店後に場所を貸しますよ」
そう言うと雄介は嬉しそうな顔をして喜んでいる。
「ありがとな」と言いながらも、店にあるソファーの話をしているので気に入ったのだろう。どうやら気を遣わずに使いたかったみたいだ。
「貸すのは良いですが、一つ条件があります」
「なんだ?」
「実は中学の後輩が雄介先輩のファンで、一度会っていただけませんか?」
「いいよ。条件とか言われるから、てっきり毎朝ご飯作れ!とか言われるのかと。料理は苦じゃないが・・・」
「そんなこと言いませんよ」
思っていたことが斜め上をいっていたので思わず笑ってしまった。
「毎朝ご飯を作ってくれというのはプロポーズみたいじゃないですか」というと、「確かに」と言って少し顔が赤くなっている。水島の都合が良い時で構わないということだったので、後でメールすることにしよう。
「今はどんな作品を書いているんですか?」
「バディものだな。シャーロックホームズみたいな探偵役と助手がいるミステリー。最近ミステリーを書いていなかったんだが、昨日エンデにいるときに思いついて今構想練ってるところ。担当編集にも随分前からミステリーを書きましょうって言われてたんだけど、中々書けなくてなー・・・」
そう言うと溜息をつく。
最近のミステリーとなると最後にどんでん返しのパターンが多いので、そのアイデアが思い浮かばなくて苦しんでいたらしい。
ただエンデで仕事しているときに、そういった考えを無くして、古典的なミステリーを書いてみてはどうだろうと思ったみたいだ。確かにエンデにはシャーロックホームズ初め、古典ミステリーやバディもののミステリーを置いている。
昔から探偵と助手役のミステリーが好きで読んでいた。解決の場面が好きで、それまでに犯人が誰かを考えてから読むようにしている。考察ノートを書くこともしばしばあって、見られないように鍵のかかった引き出しの中に入れている。
「担当編集の方にはそのこと言いました?」
「いやまだ。ある程度書けてからにしようと思って。期待させてもな。ダメになるかもしれないし」
「何かあれば手伝いますよ」
「頼もしい後輩を持って光栄です」
冗談めいた感じで言われて二人ともぷっと笑う。
「そういえば雄介先輩がミステリー好きになったきっかけって何ですか?」
「なんだよ、いきなり。てか話してなかったか?」
「聞いたことなかったです」
不意に気になったことを問いかけると雄介は味噌汁を一口飲んでテーブルに置いた。
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