2話 プロローグ~予感

埃をかぶった机の引き出し。


その中に一冊のノートを見つけた。


だいぶ使い古されたしわしわなノートで汚れが目立つ。


表紙には何か文字が書いてあるが汚れていて読めない。


かろうじて読めた文字は『日記』という文字だった。


私は好奇心を抑えきれずそのノートを広げる。


中も表紙同様に所々読めない部分がある。



――――――――――――――――――――――――――――――――

プロローグ~予感  ▇年 ▇月 ▇


今日は悲しいことがあった。

振る返りたくはない。

だから▇しかった思い出を▇くことにする。



あれはいつの日だったろうか

▇の記憶を辿っていくことにしてみた


「ねえ、そこの君!! 音楽とかやってみないかい?」


大きな声に思わず振り向く。

太陽のようなひまわりみたいな笑顔の▇の子だった。

自分とは真▇。

きっと同じ道を歩くことはないだろう。

この▇はそう思っていた。


『人生は何が起こるか分からない』

昔からそんな言葉を腐るほど聞いてきた。

何気なく暮らしていたって明日▇きている保証はないし、もしかしたら宝くじが当たって一気に億万長者なんてこともあるかもしれない。


でも▇のどこかで、都合よく解釈し可能性を否定してる。踏み出そうとしない。

人生良いことなんてそうそう起きることはないし、どうせいつかは死んで骨になっていく。

マイナス思考ばかりが▇の中を支配する。


他人のことを考える。

誰かのために何かをしたって報われることはないだろう。

だって人は自分勝手な生き物、自分が一番かわいい。▇人は二の次。


気を使い過ぎて自分が一番疲れる。どうして皆は普通に▇っていられるの?


何かを求めることもなく時間だけが過ぎていく。

そうやって単調な生活を送っていくつまらない人間、自分もその人間の一人だ。

▇てを諦める。



桜の木が風に揺れ、無数の花びらは降らせる季節に▇と出会う


退屈だった日常

どこか憂鬱だった毎日

変わっていくはずだった


またいつも通りの日常

退屈な日常

終止符を打ったのは▇との出会い


ただ何となく分かる

あの日感じたことは

何かが変わる予感だった


きっとこれは物語が動き出す予感


桜が舞い多くの人が新しい日常を迎える季節

▇と出会った

▇の物語の始まり


――――――――――――――――――――――――――――――――


「何の日記何だろう?」


目を通してみたが読めない部分も多くよく分からない。

日記なのにその日のことじゃなく昔のことを思い出して書いているように見える。

でも日記のような文章じゃないみたいだ。

どこか詩のようで、物語のような感じだ。


「他のページは全然読めないな」


他のページを見てみるが、黒いペンでぐちゃぐちゃに塗りつぶされ、水を被ったように滲んでいる。とても読める状態ではない。


ふと自分の腕時計を見る。


「わ、もうこんな時間だ」


この後人と会う約束がある。時間に遅れないよう慌ただしく準備をする。


「早く行かないと」


その行先は……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

パラレルサウンド~パラレルワールドの君と奏でる未来への詩 羽羽 ジョージ @arfu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ