3.

「ほら、買ってきたぞ。やっぱりんご飴なかったから、チョコバナナ二本ずつ。晩飯になりそうなもんは、家帰ってからでも――」

 バイブ音が鳴って、蓮のスマホに母からのメッセージが入る。

「何か、祭り行くから晩飯外で食ってきてって言われた」

 適当にコンビニにでも寄ろうかと蓮が考えていると、水無月がチョコバナナの一本目を食べ終えて、言った。

「俺、作ってやろうか。英語教えたくらいで、チョコバナナの買い出し頼むの、フェアじゃねえし」

 水無月にとって、英語を教えたことは、そんなに価値のあることではないらしい。

「言うて水無月ってめっちゃ目悪いじゃん。料理とか危なくない?」

 純粋な心配は、水無月に鼻で笑われた。

「弁当自分で作ってるからな。おまえよりできるよ。おまえ多分作ってもらってるだろ」

 水無月が少し得意げなのがまたおもしろい。

「や、そうだけど、何でわかるんだ?」

「わかりやすいってか、明白だろ。弁当開けるときの表情が、何入ってるかわかってる人間の表情じゃない」

 水無月が言い切った。それは、名推理のごとく、当たっていた。当たり、と告げれば、水無月は満足げだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る