4.

 だからさ、兄貴。

 教えてくれよ。

 あいつは何で人混みでああなったんだ。

 蓮は死んだ兄に助けを求める以外思いつかず、兄の遺品を漁っていた。無駄なのはわかっている。一番ヒントのありそうなのは兄の日記だが、それはそれで、兄からの信頼を失くす気がして、開けずにいるのだった。

 あのブルーサファイアを描きたい。ほぼ断られたようなものだが、秋のコンクールに間に合うかもわからない。それなのに、蓮は水無月の容姿に魅入られていた。わかっている。柊の弟だから、蓮を拒絶しきれないだけで、水無月はいつも、人を拒絶している。

 嫌いなのは人間だと言った。でも、それなら学校でも、起こりうるはずだ。なぜ、水無月はあの人混みで、そして入学直後の体育教師との接触で、ああなったのだろうか。

 兄の言葉を想像してみても、蓮には答えなどなく、ただ水無月悠は理解の範疇を越えていることだけがわかるのだった。

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