3.

 本当に何でこんなことになっているんだろうな。蓮の兄、柊は刑事だった。その柊が気にかけていたのだから、水無月悠は、何らかの犯罪の被害者か、加害者家族、なんだと思う。もしくは、今進学校にいることから想像もつかないが、非行少年だった、とか。

 水無月悠の鞄を連が持ち、水無月悠の様子を見ながら、蓮はいつもより注意深く歩いた。夕日に目を細め、水無月悠はサングラスを取り出した。

「やっぱり日差しってきっついのか?」

「それなりにな。西日は格別にきつい」

 白銀の髪にブルーサファイアの瞳、そして色白で整った顔の美少年と歩いていると、視線はそれなりに追ってくる。水無月悠は視線を冷たく見つめ返し、委縮させていた。

「蓮君は」

「『君』はやめろ。蓮でいい」

「じゃあ、蓮。蓮はよく俺に声かけたな。放っとけばよかったのに」

 心底不思議そうにする水無月悠に、欠落という言葉が蓮の頭をよぎった。

「兄貴の知り合いなんだろ。放っとけないし、そうじゃなくても、声かけるだろ。あんなしんどそうに机で死んでたら、普通に」

「……ふうん。それが、常識なのか?」

「オレにとっては、そう」

「霧野さんの弟って感じだな」

 そう呟いて、水無月悠は蓮の前を歩き出した。少しは元気になったようだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る