第13話 受付嬢の休日

「ふぁぁぁ。今日は休みだから寝てたい……けど、お腹空いた」


 エマは普段自炊を全くしない為、家には酒とツマミ位しかないのだ。


「んーーーーーーーーー」


 ベッドでのたうち回って何とか身を起こす。


「軽く化粧しないとなぁ。誰かにあったら困るしなぁ」


 上下のスウェット姿で洗面台の前に立つ。

 洗顔して霧吹き型のスタイリング剤をふきかけ髪を整える。


 スウェットを脱ぎ捨て洗い場に置く。

 下着姿で服を選ぶ。


 はぁぁ。胸が気になるから緩めのシャツでいっかぁ。大きめのシャツ着て、タイトめのロングスカートにしようかなぁ。


 服を着替えて化粧を手早く済ませる。

 小さめの鞄を腕に提げて家を出る。


 鞄の持ち手を持ってブラブラさせながらメインストリートに向かう。


 そこに行くまでに屋台が出ていた。

 ホットドッグの店だった。


「すみませーん!」


「おう! お客さんか! これまた別嬪さんだねぇ。ホットドッグでいいの?」


「はい! ひとつ貰っていいですか?」


「嬉しいね! どうぞ!」


 長いパンの切れ目にウインナーが挟まっていてキャベツの千切りが敷かれている。ケチャップとマスタードが多め。


「ハムッ…………んー! おいひっ!」


「ハッハッハッ! 美味しいかい?」


「ングッ……はい! ウインナーがジューシーで、パンもフワフワ! 美味しいです!」


「良かった! またおいで」


「はぁーい!」


 食べながら歩いていると、小さい女の子がいた。しゃがんで泣いている。


 歩いていき、しゃがんで話しかける。


「大丈夫? どうしたの?」


 答えは返って来ない。


「もしかして、お母さんとお父さんとはぐれちゃったの?」


 すると、コクッと頷いた。


「そっかぁ。じゃ、一緒に探そっか!」


 探す気になったのか、顔を上げてくれた。

 目が赤いがクリッとしている。


「お母さんとお父さん、探そっか?」


 コクッと頷く。


「よーし、じゃあお姉さんのとっておきを見せてあげよう! 名前は?」


「マリー」


 すると、指から光が空に伸びて文字を作り出していく。


『マリーちゃんが探しています。お父さん、お母さんいますかー?』


「これでよしっ! ちょっと待ってようか」


 しゃがんで一緒に待ちぼうけ。


「マリーちゃんは好きな食べ物は何?」


 シクシク泣きながらこちらを見てくる。


「グスッ……パフェ」


「えぇー! 私と一緒だ!」


「何のパフェが好き? 私はバナナが好きなんだぁ」


「マリーは、イチゴ」


「んー! イチゴも美味しいよねぇ! 甘酸っぱくて生クリームと合うよねぇ」


 ウンウンッと頷きながら話を聞いていると、兵士団の軍人が二人やってきた。


「エマちゃんだ!」


「あーっ! エマちゃんの私服姿レアだなぁ。ラッキー! あれ? エマちゃん、どうしたの?」


「この子が迷子になっちゃってねぇ。お父さん、お母さんを探してるんだぁ」


「あー! だからこの上に文字を出してたのかぁ。俺達も探してあげるよ」


「えっ?」


 驚いていると、二人はもう離れて探しに行った。


「マリーちゃんが迷子でーす! ご両親居ませんかー?」


「マリーちゃんが探してまーす!」


 マリーを見ると泣き止んでいた。


「おねーちゃん凄いね!」


「んー? どうして?」


「男の人を従えてるんだもん!」


「したがえ……てる?」


 小さいのにそんな言葉を知ってるなんて最近の子は大人なのねぇ。

 少し待つと、複数の人が走ってやってきた。


「マリー! ごめんな!」


「マリー! ごめんなさいね!」


 ご両親が見つかったようだ。

 マリーは両親に駆け寄り飛びつく。


「パパァ。ママァ」


「ごめんな」


 しばらく抱き合っていると、離れてこちらに向き直った。


「マリーを見てて頂いて有難うございました!」


「いえいえ。私も軍人の端くれなので」


「このおねーちゃん凄いんだよぉ!? 男の人を従えてるんだよぉ!」


「マリーちゃん……その言い方はちょっと……」


 困ったように頬をかいていると、両親も苦笑いであった。


「マリー、お姉さん達は助けてくれたのよ。お礼を言おうね?」


「うん。おねーちゃんありがとー!」


「どういたしまして。もうはぐれちゃダメだよ?」


「うん!」


 手を振って去っていく。

 時間はもうお昼を回っていた。


「エマちゃん、ご両親見つかってよかったね!」


「うん! 探してくれてありがと!」


「うん! エマちゃんのためだからどうって事ないよ。じゃ、俺らは戻るから! じゃあね!」


「仕事、頑張ってねぇ!」


 胸の前でガッツポーズを作って応援する。


「おおぉぉぉぉ! エマちゃんから応援されたぁぁぁ! やる気が半端ねぇぇぇ!」


 騒ぎながら去っていく男達。


 ふふふっ。男って単純。

 でも、たまに可愛いなって思っちゃうのよね。

 いやらしい目で見てくる人がほとんど。

 胸が大きかったから尚更。


「はぁぁ。お昼ご飯かぁ」


 フラッとカフェに入る。

 パスタがあったのでそれを頼んで済ませる。


「せっかくの休みだしなぁ。服でも見ようかなぁ」


 服屋さんに入る。


 流行りとかも大事だけど。

 それより、着やすい服だなぁ。


 大きめのシャツだといいかなぁ。

 あまりカチッとしたやつだと目立つしなぁ。

 あっ。このロングカーディガンがいいなぁ。

 これ着れば目立たないだろうし。


 服屋で買い物をして街をふらっと歩く。

 外は日が落ちてきた。


 いつもの店に足を向けようとする。


「ねぇ、お姉さん。俺達と飲みに行かなーい?」


 三人組に囲まれる。


「あっ、遠慮しておきまーす! 一人が好きなのでぇー!」


 スッと素通りして過ぎ去ろうとすると腕を掴まれた。


「まぁ、そう言うなよぉ。行こうぜぇ? なっ?」


「そうだぜぇ。楽しいことしようぜぇ?」


「おっ! いい体してる!」


「おぉぉ! 飲みに行こう? なっ?」


 腕を引っ張られて少し引きずられる。


 掴まれてる腕を掴み返し、捻る。


「いでででで! 何しやがる!」


「優しくしてりゃ付け上がりやがって!」


 再び掴みかかってくる。

 腕を取り、そのまま背負って投げる。


ズダァンッ


 男は背中から落ちる。


「やりやがったな!? 容赦しねぇぞ!」


 二人が殴りかかって来る。


 はぁ。タイトスカート動きにくい。

 こんな事ならパンツ履いてくればよかったなぁ。


 最小限の動きでパンチを避ける。

 そして、ワンツー。

 両脇にいた男達の顎を打ち抜く。


 脳を振られ倒れ込む二人。

 気が付くと野次馬に囲まれていた。


 騒ぎを聞き付けたのか軍の人がやってきた。


「あれ? エマちゃん、どうした?」


「この人達に絡まれて……」


「ノシちゃったと……」


「うん! 怖かったぁー!」


「おぉ。見事に顎をいってるねぇ伊達に軍人やってないねぇ」


「後お願いね!」


「おう! じゃね! …………お前ら俺達のエマちゃんに手ぇ出しておいて五体満足で帰れると思うなよゴラァァァ!」


 三人組を引きずって行く。


 はぁ。これだから軍人にしかモテないのよねぇ。困ったものだわ。


 いつもの店に行く。


「マスター。パフェとワイン……それと、ラーメンってできる? たしかゼルフ帝国の食べ物だったけど……」


「できるよ。珍しいね? 今日は休みかい」


「そっ。久しぶりに休みなのよねぇ」


 マスター少し顔が赤い?

 そんなことないわよね。


 ワインとパフェが出される。


「パクッ……あぁ。やっぱり美味しい。なんか今日は疲れたなぁ。色々あって……」


 黄昏ていると扉が開く音がする。


「あー! エマさんが私服だぁ! 珍しい! 今日は完全に休みですかぁ? 可愛いじゃないですかぁ! そしてやっぱりおっぱい大きい!」


「ソフィア、声が大きいよ?」


「なんか、男に絡まれて、ノシちゃったらしいじゃないですか!?」


「はぁ。思わずね。めんどくさくなって……」


「流石です! カッコイイ! それでこそ軍人!」


「どうせそのせいで一人ですよ……」


「良いじゃないですか! 一人上等! あっ、マスター、私はエールをください!」


「あいよ」


 あぁ。私の休みはトラブルばかり。

 今度の休みこそダラダラしてやるんだからぁ。


 こんな受付嬢、好きですか?


 ――――――――――――

 あとがき

 ――――――――――――

 女主人公が思いの外難しかったため

 このお話はここで終わりにします!

 次は転生、追放ものを思考しています!

 次の話は出来る限り長く続けたいので

 また楽しんで貰えるように頑張ります!

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ヘッポコな受付嬢が実は最強だった!?~国を平和にする為に密かに奮闘中~ ゆる弥 @yuruya

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