第12話 内部調査
「おはよー!」
「あっ! エマおはよー! 昨日は凄いメンツでご飯に行ったらしいじゃない!? 軍の中でかなり噂になってるわよ!?」
「うん。ちょっと兵士団の方にしばらく招集されることになって、それの打ち合わせで行ってたんだけど、そしたらたまたま元帥に声かけられてねぇ」
「えぇ!? たまたまで元帥に声掛けられるの?」
「私が、魅力的だったから、かな?」
「な、なんかエマ大丈夫?」
「ま、今日から兵士団に行きまーす! お願いしまーす!」
ルークがこちらに来る。
「そうか。上から話は聞いている。迷惑かけるんじゃないぞ!」
「(ボソッ)調査か何かですか?」
「(ボソッ)スパイの調査よ」
「(ボソッ)了解です」
「はぁーい! では、行ってきまーす!」
元気に挨拶すると詰所を出る。
兵士団の詰所に行くと、まぁ歓迎された。
「エマちゃん、アイスあるよぉ!」
「エマちゃん、パフェあるよぉ!」
「エマちゃん、ワイ────」
バギッボゴッ
「ありがとー! でも、元帥のとこに行かなきゃ! またねぇ!」
手を振り詰所の中に入っていく。
なんか最後の人大丈夫だったかなぁ。
元帥のところに行く。
コンコンッ
「入れ!」
「しつれーしまーす!」
「おぉ。エマか。今日から調査か?」
扉をバタンと閉め、元帥モードになる。
「そうよ。一応住み込みで調査したいのよね。何処か余ってる部屋ある?」
「お前切り替えすごいな?」
「そう? 慣れよ。それより部屋は?」
「あぁ。来客用の部屋があるから使うと良いだろう。しかし、泊まってるのを知られるなよ? ワシにはあ奴らを制御する自信が無い。エマが泊まってると知られれば奴らは獣になるだろう」
「えぇ。分かってるわ。上手くやるわよ」
赤縁のローブを深く被り認識阻害の魔法を施して部屋に入る。
部屋に入るなり防音、防人の結界を張る。防人の結界とは自分以外の人を部屋に入れなくするのだ。
勝負は仕事が終わってからの時間ね。
はぁ。また寝る時間が不規則になって肌荒れしちゃうじゃない。
でも、この国の平和の為! 頑張れエマ!
自らを鼓舞して準備をする。
部屋の窓にも開いてる事が分からないように認識阻害の魔法をかける。
準備が終わると一旦帰ったふりをする。
詰所を出ると。
「エマちゃん、もう帰るの!?」
「エマちゃん、また来てね!?」
手を振って答える。
「はぁーい! また明日来るよぉ!」
少しでも手が空いていたものは手を振りに出てくる始末。
スパイさんもこれだけ分かりやすくしてくれればいいんだけどなぁ。
家の方向に向かいしばらく歩くと路地裏に行きローブを被り転移する。
さぁ、誰が黒かしらね?
部屋から他の部屋に出入りしている配達屋が来るのを待つ。
息を潜め、ただひたすら待つ。
それは、皆が寝静まった頃だった。
来た。
そいつは音を消して宿舎に近づいてきた。
向かう部屋は……大佐の部屋であった。
むぅ。確か大佐はゼルフ帝国出身。
最近帝国の奴らがやけに入国してる。
怪しいとは思うのよね。
何かを受け取ると去っていく。
窓から飛び出すと配達屋に一瞬で迫る。
「スリープ」
フッと力が抜けたのを受け止め、受け取ったものを確認する………………手紙だ。
ピッと封を開けて恐る恐る読む。
定期連絡かしら?
『母さんへ お見合いはしないって言っただろ。俺は自分で良い人を探したいんだ。この国で相手は見つけるよ。だから、今回の話は放って置いてくれ。 バラク』
あら? お見合いも素敵だと思うわよ?
ってそうじゃないわね。
普通の手紙だったわ。
「リバースクロック」
時が遡るように手紙が元に戻っていく。
最早エマはなんでもありである。
パチンッと指を鳴らすと配達屋は目を覚まし、首を傾げて去っていく。
部屋に戻りまた様子を見る。
「はぁ。今日はもう朝になるわね。んーーー! まぁ、気長に調査しないとね」
一旦、出勤する振りをする。
そして、部屋で就業が終わるまで寝る。
また帰った振りをして見張る。
これを繰り返して一週間が過ぎた頃。
それは夜中だった。
音もなくやってきた配達屋は今までと違う隠密を生業にしている者のようであった。
これは、掛かったわね。
入った部屋は……クラール聖国出身の者の部屋であった。
あそこの国も厄介なのよね。
手紙を受け取ったと見られ去ろうとする。
窓から出て駆け寄る。
「ス────」
何かが飛来した。
咄嗟に首を捻る。
通り過ぎたのは小型のナイフであった。
やるじゃない。
対抗してナイフを出す。
次々とナイフを放ってくる。
キンキンキンッキンキンッ
迫るナイフを全て叩き落とす。
懐を探ってる間に突撃する。
「シッ!」
顎を狙って掌底を放つが、背をそって躱される。そのままバク宙して立て直そうとする。
が、着地点を狙い足で払う。
バランスを崩し手を着く。
その手をとって後ろに引き頭を押さえつけて拘束する。
「スリープ」
スヤスヤ寝たところで、手紙を拝借する。
どんな悪巧みかしら?
『同志へ
こちらには、光魔法を使用できる者自体が少ない。少ないが、その中に我らの理想としていたロリ巨乳の光魔法を使える者がいる。
是非、その者を我々の国で崇拝しようではないか。ありがたいお姿を遠くから眺める事こそ至高だと知れ。
同志より』
グシャグシャ
手紙を握り潰し。
「バーニング」
ゴウッという音と共に小さな火柱が立つ。
配達屋の頭に手を置き。
「マインドコントロール 今日は何も無かったわ。勘違いでここに来てしまっただけ。そのまま帰りなさい」
パチンッと指を鳴らすと、スッと立ち上がり音もなくその場を後にする。
うん。
今日のことは忘れましょう。
そして、日頃から色々気をつけないと見られているのねぇ。
化粧は忘れられないわね!
肌の手入れも毎日ちゃんとやらなきゃ。
……気を付けるとこそこか?
その後も特にスパイらしき所はなく、時が過ぎていった。
◇◆◇
コンコンッ
「入れ」
中に入る。
ローガンには少し痩せたように見えた。
「エマ? 大丈夫か? 何かわかったか?」
「はぁぁぁぁ。みんなシロよ」
「それはホントか?」
「えぇ。厄介ねぇ。となると、魔法師団か本部ね」
「本部ってぇと……」
「えぇ。外交官とか……結構中心の人ってことになるわね」
「そうか……そりゃまた厄介だな。俺達だけじゃ探る術がねぇぞ」
「そうなのよねぇ。本部に潜入するのは困難を極めるわ」
「取り敢えず徐々に探っていくしかねぇんじゃねぇか?」
「そうね。今回の内部調査も兵士団はシロってわかったから良かったじゃない」
「あぁ。少し痩せたんじゃねぇか? 大丈夫か?」
「あまり見ないで。セクハラで訴えるわよ?」
「そんだけ元気なら大丈夫だな。しっかり休めよ」
「じゃ、帰るわね」
元帥の執務室を後にして、詰所を出る。
「エマちゃん、今日はもう帰り?」
「そうよ! 今日でここでの勤務は終わりー!」
「えぇぇぇ! マジかよぉ」
「毎日エマちゃんに会えて幸せだったのに……ゴフッ」
倒れ伏す男を見ながら手を振って詰所を後にする。
「またねぇ! 受付にはいるから会いに来て?」
「「「「「行くーーー!」」」」」
送り出してくれる兵士団の男達。
その後ろにはプルプルと拳を握り締める元帥の姿が。
「貴様ら仕事しろぉぉぉぉぉ!」
「仕事はちゃんとしないと、メッだよ?」
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