45話side② キュウビの舞い
時空を歪めて暗躍する者?
そんなことができるのはヨリコを抜けばそれこそキュウビのような神、またはほぼ同じ霊力を持った霊にしかできない。
だが、そんな力をもつ存在は、ほぼいないと言っていいくらいに希少な存在だ。
少なくとも、ヨリコの記憶の中には、それほどまでの存在に関する記憶はキュウビ以外いない。
【一体、だれが…そんなことを】
『真意はどこにあるかも分からぬ。この時空に居るのも恐らく手先のもので、黒幕ではない』
グルル、と深くキュウビの喉が鳴る。
『それにこの時空には、空気からして人を蝕む瘴気が僅かながらに空気に含まれておる。我らも長くいれば蝕まれて悪霊化してしまうくらいのな』
時間がない、とキュウビは深く息を吸って鈴のついた扇子を手にひらひらと蝶のように舞った。
どこまでも自由な蝶が、光へ向かっていくような神々しい風景だった。
キュウビが舞うたびに、扇子についた金色の鈴が間を合わせるようにリィン、リィンと鳴り、周囲に金色の光が淡く纏われ始める。
舞いの形を二周すると、キュウビは扇子の動きを止めた。
『恐らく…お主たちが探している二人は<木田大学博物展示室>に居る。我の子に手を出したものはまた別の場所にいるようだが、そちらも判った』
【木田大学…この区域で一番の大学だけど…この街の端っこだあね】
『早く行った方がいいかもしれぬ。とびきり強力な悪意を起こそうとしている不届き者が居るようだ。我は子に手を出した者の所へゆく』
キュウビはきつく目を吊り上げたまま、右腕を天に掲げ鈴の音と共に姿を消した。
その顔は美しい人間の女性の顔でありながら、動物神が修羅を纏ったような恐ろしく憤怒のこもった顔だった。
【あたしは、木田大学に行かなきゃ…。キュウビ様の舞いで、惑わしの術が外れたみたいだし】
契約している植志田の位置に行ってもいない、というのは幻惑の術がかけられていた様で、キュウビが舞ったことでそれが解かれた。
ここからかなり離れているはずの木田大学から間違いなく気配を感じる。
木田大学…あまりヨリコにとっていい思い出がない。
病にかかっていた真辺依子を、ここで処置するまでもないとヤブ医者のところへ回したのだ。
職員も冷たく、業務以外のことには気を遣う素振りもなくただただ業務的な機械のようだったのを鮮明に覚えている。
そして、当時から木田大学の研究室では資料として人体のサンプルを集めていたというのも囁かれていた。
市内の病院に提供をよびかけていた、とも…。
ダンジョン管理者に好かれました…~学校が作り出すダンジョン攻略~ 銀月 @gintuki1995
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