独り立ち

 今日は、私が旅立つ時だ。


 守られてきた日々に別れを告げ、たった一人で世間の荒波に挑み始める日だ。

 私は今日まで、数々の人たちに出会ってきた。

 その人たちには、多くのことを教わったことを忘れない。


 かつて世界を閉ざしていた少女は、自らその檻を抜け出した。

 語り尽くせないほどの物語と、強大な勇気があったと話してくれたのだ。

 彼女が自ら抱えてしまった孤独の冷たい海は、妄想を肥大させ自らを閉じ込めてしまうのだと。

 その孤独と静寂を破るきっかけを幸運にも彼女は得ることができ、それをモノにしたのだ。


 また、幼少期から画家の道に進み、それ以外を省みない生き方をしてきた巨匠の爺さんもいた。

 そんな彼の話をゆっくり聞くことができたのは幸運だったと思う。

 至極当然な、考え直せという声も聞かず、ただ必死に筆を走らせてきた彼のは、相当なものだった。きっと私にはマネできないだろう。

 彼の言い放った「努力なくして才能なし」という言葉は、今も私の胸に刻み込まれている。


 草原でただ寝そべっている青年と初めて会話をしたのはいつだっただろう。

 彼は何を望むことなく、ただ空を見つめていた。

 毎日のように、まるで石の様に全く動かない彼に、私から話しかけたのをよく覚えている。

 彼には、独特の感性があったのだと思う。きっと他にはない、特殊な考え方が。

 彼から教わった『ム』という概念を、私はきっと一生理解しきることができないだろう。

 しかし、彼が私に安静の場所を与えてくれたのは確かだ。


 彼らとの出会いは、私に重要なことを教えてくれた。

 誰も教えてくれない、大事なことを。


 孤独に閉じ込められ、自壊しかけた少女。


 孤独に世論と戦い、その努力で成功を収めた巨匠。


 孤独を愛し、精神の拠り所を手に入れた青年。


 そして孤独の中でも希望を見出した少女。


 きっと『孤独』というものは、想像しているよりも奥深い代物なのだろう。

 それは味方ではなく、そして敵でもない。

 孤独は、私たちに寄り添っている存在なのだ。


 私は今日、独り立ちをする。

 決意固く握り締めた、万年筆と共に。

 そして、孤独と共に。

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ソリスト チョコチーノ @choco238

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