第二話「究極の出し巻き卵」

「で、なんで土間どまなの?」


 真帆が真っ先に思ったことを口にする。


「雰囲気が出るとのことです」


 それに対し、メイド服の黒髪ロングの女性が返答する。


「私昔の台所使ったことないけど……」


 真帆が土間にあった調理器具を見て不満そうに告げる。


「【和食】スキルでカバーできるとのことです」


 黒髪ロングの女性が返答する。



 真帆は隣に立ち、自分の言葉に返答をする女性にちらちらと見ながら、意を決して言う。



「というか、あなたは誰でしょうか……?」



 真帆の言葉に対してメイド服の裾をやや広げてお辞儀をする女性。


「柴犬神様より、真帆様のサポート役を授かりました、アリシア・エリザベス・サユリクリスティーンになります」


「ん? ん??? ん????? アリシアなんだって?」


「アリシア・エリザベス・サユリクリスティーンでございます」


「うん、なんかいっぱい突っ込みどころあるんだけど、一点私の聞き間違いかな? めっちゃ日本語混じってんだけど」


「間違いではございません。母親が日本人でございまして」


「ああ、そういうこと」


 真帆は納得がいったというように、手のひらに拳で叩いた。


「真帆様、時間がございません、ゴールデンレトリバー神に和食を作って差し上げねばなりません。そして、柴犬神の外交の手助けをするのです」


「おおお、おう、了解です。とりあえず、お客さん待たせたらダメだもんね。よし、作りますわ」


「はい、サポートいたします」


「……」


「……」


「……」


「……」


「……」


「……」


「え、どうやってスキル発動するの?」


 真帆はスキルの発動の仕方がわからず、アリシアに聞く。


「わたくしは存じ上げません。お力になれず、申し訳ございません」


 早速問題にぶつかってしまった真帆。

 しばらく思案した結果、一つの答えにたどり着いた。


「よし、究極の出し巻き卵を作ろう」


「それは、どういった狙いが?」


「私が唯一作れる料理だから」


 真帆は自信満々といった形で胸をはる。

 それに対し、至って冷静な態度で接し続けるアリシア。


「仰せのままに。何かございましたら、指示を下さい」


「うん、これは一人で作れるから大丈夫!」


(仕方ない、究極の出し巻き卵で反応を見るか)



 ──迎賓館


「普通ですね」


「へ……?」


 真帆はゴールデンレトリバー神の言葉に信じられないといった表情を浮かべた。


「出し巻きは以前も来日した際にいただきましたけど、それに比べても普通ですわね」


(ふ……つう……?)


 脱力した様子を浮かべる真帆に、ため息をつく柴犬神。


(【和食】スキルの発動方法教えてー!!!!!!!!!!!!)



 真帆の細胞中に嘆きが響き渡った──





==========================



【次回予告】


究極の出し巻き卵(自称)を作った真帆は撃沈した……。


ゴールデンレトリバー神の機嫌も損ねることに!


最悪のこの状況。


何とかしろ!の目線を送る柴犬神。


大ピンチの真帆は【和食】スキルを発動することができるのか?!



次回!

第三話「瞬間、心、壊れて」

お楽しみに!

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転生!『柴犬神』の料理番~【和食】スキルを手に入れ、犬の世界で日本の神様の料理番として成りあがる~ 八重 @yae_sakurairo

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