第3話 見た目より中身

あれから10分後、フランによる街案内がスタートした。まずは休憩した場所の目の前の建物だ。


「まず、このおっきい建物が冒険者ギルドだよ!お兄ちゃんは冒険者登録してるの?」


「え?!お兄ちゃん?!…お、俺はまだ、ぼ、冒険者登録なんてし、し、し、してないよ」


フランにお兄ちゃんと呼ばれた事に動揺してしまい、まともに話せなかった。が、フランには伝わったらしい。


「じゃあ、登録しに行こうよ!私もギルドに用があったし」


「そうだな。ありがとう。ちょっと質問いいか?」


「ん?どうしたの?」


「なんでこんなに入り口大きいんだよ」


「それは簡単だよ。こういう獲物を運んでくためだよ」


フランは、そう言いながら引きずっている生き物を指さした。


「そうなんだ。教えてくれてありがとうな!」


「いいよ、いいよ。僕もお兄ちゃんの役にたてて嬉しいから」


俺達は、ギルドの中に入った。中には沢山の冒険者達が居た。みんな、とても強そうだ。


「らっしゃい、フランの嬢ちゃんと…おめぇ、ここで見ねぇ顔だな。何しに来たんだ?」


俺たちに向かって声がかけられた。その声の主は、ギルドに居たおじさんだ。そのおじさんはいかつい顔立ちをし、ガタイも良い。髪の毛は生えてなく、その代わりに髭がたくさん生えている。顔には傷跡があるため、たくさんの激戦を超えてきた冒険者だと予想した。こんな人に目を付けられるなんて、俺はなんて不幸なんだよ。


「え、いや、その〜」


「よおマクガフ!今日はギガントボアの親玉を狩ってきたぞー!」


そう言うと、フランは先程まで引きずっていた生き物をマクガフと呼ばれた男に差し出した。


「こいつぁ、またデケェ獲物を持ってきやがったな。こんなデケェギガントボアは初めて見たぞ。やっぱり、フランの嬢ちゃんにゃぁ誰も適わねぇぜ。よし、今から鑑定して換金しちゃるからそこで大人しくしときな!」


マクガフは、ギルドの職員達と奥の部屋にギガントボアを運んで行った。このギルドにある扉はどれも大きいらしい。


ギガントボアの換金が終わり、俺は再びおっさんに絡まれた。


「で、あんちゃんはなにしにうちに来たんだ?」


「なにしに来たって...冒険者登録に来ただけですけど...」


俺は弱々しい声でそう言った。すると、マクガフは最大の笑みを浮かべた。


「そうだったのか!よし!ならこっちへ来い!登録してやるよ!」


「あ、ありがとうございます」


初っ端から絡まれたせいで俺はマクガフの事をあまり好きになれそうになかった。


「おい、兄ちゃん。こっちに来てくれ」


「わ、わかりました」


俺はマクガフの元へ近づいた。するとマクガフは、紙とペンを取りだした。


「この紙に必須事項を書いてくれれば登録は完了だ。簡単だろ?」


俺はこくこくと頷きながら紙とペンを受け取った。紙には名前と年齢、なりたい職業を書く欄と、職業一覧しか書かれていなかった。とりあえず、俺はその紙に従って記入した。


(職業か...お!剣士がある!魔法使い?!凄い!とても悩むぞ…。テイマー?なんだそれ)


「テイマーってのはな、ほら、あれだよ。あのー…。あ!モンスターを仲間にして一緒に戦う職業だよ」


マクガフは俺の心を読んだのか、そう答えてくれた。本人はテイマーについてうろ覚えだったようだが。


「あのー、マクガフ…さん。テイマーって、あまり人気ないんですか?どんな職業なのか忘れてたようですけど…」


「まぁ、確かにテイマーしてるやつは珍しいよな…。でも、人気がないってことはないんじゃないか?モフモフしてるモンスターをテイムして楽しんでるやつとかもいるし」


「モ、モフモフ!本当ですか!」


「ああ、本当さ。ただし!そいつらは全く強くないけどな。長旅や洞窟探索をしたいってんならオススメはしないぜ」


(よしっ!俺はテイマーになろう!)


俺は最後の忠告を聞かずにテイマーになる事を決め、紙の最後の欄に『 テイマー』と書いた。それをマクガフに差し出す。その紙を見て、マクガフは驚いていた。


「おい!ほんとにテイマーでいいのか?あれほど言ったのに…」


「いいんですよ。僕が決めたんですから」


「…兄ちゃんが決めたなら別にいいか。よし!この内容で手続きしてやる。ちょっとそこで待ってろ」


マクガフはそう言い残して部屋の奥へ行った。


3分程経った頃、マクガフが部屋から出てきた。


「おい、兄ちゃん。冒険者登録出来たぞ。ほれ、冒険者カードだ。絶対に無くすんじゃないぞ」


そう言うと、マクガフは俺にカードを渡してきた。


(これが…俺のカード…!ようやく冒険者になれるんだ!)


「あ、ありがとうございます!ところで、これはどんな時に使うのですか?」


「あぁ、説明してなかったな。それはな…」


「それはね!クエスト受ける時に使うの!」


突如マクガフの声を遮る声がした。その声の正体は、もちろんフランの声であった。手元には、沢山のお金が入っているであろう皮袋がある。


「あとね、あとね。えーっと…。とにかく!色んな事に使うの!」


「そ、そうなのか…。教えてくれてありがとうね」


「うん!お兄ちゃんが困ってたからフランが教えてあげたの!もっとフランに感謝して!」


フランは胸を張ってそう言った。


「ありがとうな、フラン。今後もわからないことは教えてくれよ」


「うん!分かった!マクガフ、お兄ちゃんの登録してくれてありがとね!」


「職員としての仕事をしたまでさ。兄ちゃんたち、これから頑張れよ!」


「頑張ります!」


そう言って、俺たちはギルドを後にした…

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異世界テイマーのスローライフ 虎龍 @yomuLOVE

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