第2話 こんにちは、人生。
「ここは…どこだ?」
目が覚めたら病院の天井が…なんてことは無かった。俺は謎の空間にいた。雲で覆われているのだろうか、そこは真っ白な空間であった。
「ここ、どこなんだよ。俺、どうなったんだよ…」
そんな事を口にしていたら、雲らしきものが1箇所に集まり、やがて人を形作っていった。
「こんにちは!慧音さん」
「こ、こんにちは…」
俺は戸惑いながら返事をした。声が小さかったからか、その雲は不服そうな顔をした。
「どこで名前を?」
不服そうにしているが、俺は無視して質問した。すると雲は、
「僕は神様だからなんでも知っているんだよ。あ、
と、笑顔で言った。そして、すぐに深刻そうな顔をした。
「今からとても重要なことを言う。落ち着いて聞いてね」
「はい」
「君はね、死んだんだよ」
「はぁ、そうですか……ってえぇぇぇぇ!」
俺は驚きを隠せなかった。
(ジョンは生きてるかな…)
俺がそう思った直後に、
「死因は車との衝突。君が庇った犬は今も元気に生きてるよ」
と、雲山が言った。俺の心を読んだのだろうか。
「そうですか…。ジョンが生きてるなら別にいいや!」
「え、もうちょっと戸惑うところじゃないの?!」
「いえ、雲山さんが俺をここに呼び出したのは、それを伝えるためだけじゃないと思ってるので」
「…バレてたか。まぁいい。本題に入ろう」
俺はその言葉を聞いてワクワクしていた。こういう時には大体、何か良いことが起きるのが普通だからだ。
「君は、自分の命を犠牲にしながらも、他の命を救った。そんな君に2つの選択肢を与よう。まずは1つ目。君のどんな願いも叶えてあげよう」
「マジで?!」
「ああ、マジだとも」
「じゃあそれ…」
「待ちたまえ!まだ2つ目を聞いてないだろ?」
俺は、どうせ聞いても同じだと思いながら
「じゃあ、2つ目はなんです?」
と聞いた。雲山は、笑顔でこう言った。
「異世界に転生させてあげよう」
「…え?!じゃあ転生させてください!」
俺は思わず即答してしまった。男たるもの、やはり転生に憧れは持っていたものだ。
「じゃあ、転生をする準備をしようか。これでも見といて」
雲山はそう言うと、俺に本を渡してきた。
(『転生者必見!超万能マニュアル!』って、なんだよ)
そう思いながらも本を読んだ。丁度雲山が魔法陣を構築し始めた。俺は雲山の方をふと見る。
(俺もあんなことが出来るようになるのか…。楽しみだ!)
俺は期待をふくらませながらマニュアルを読んだ。
1時間が経ち、俺はマニュアルを読み終わった。どのくらい進んだのか気になり、チラッと雲山の方を見た。そろそろ完成しそうだ。
「おーい!準備出来たぞー!そこの魔法陣の上に乗ってくれ!」
雲山が大声で言っている。俺は急いで魔法陣の上に乗った。
「大規模な魔法だから時間がかかってしまった。申し訳ない。それでは、君を今から転生させる。なんと名乗ってもよし!どんな風に生きてもよし!そんな人生をお楽しみください…」
魔法陣が起動し、辺りが光っている。段々と雲山の声が聞こえにくくなってきた。
(いよいよ転生か…。待ってろよ!異世界!)
光が強くなり、俺は思わず目を閉じた。
目を開くと、そこには大自然が広がっていた。後方には森林が、前方には草原と町が、隣には池がある。
(ついに転生したのか!)
とりあえず俺は、池を覗いて自分を見た。転生前と顔もスタイルも変わっていなかった。
(少しぐらい変えてくれても…。まあいっか!人生は楽しんだもん勝ちだからな!)
その時、森林の方から木が折れる音がした。
「誰だ!」
こんなところで死ぬのは嫌だから、俺は咄嗟に逃げる体制を作った。やがて、
「君こそ誰だ!僕の狩り場に入ってきやがって!」
という声がした。森林の中から女の子が出てきた。目はクリっとし、鼻もスラッとしていて愛嬌ある顔であった。身長は恐らく160cm後半だろう。金髪でショートカットにしており、赤い目をしている。赤と白の服に身を包み、背中には、彼女の身長程の長さの弓を携えている。そんな可愛らしい彼女は、大きな生き物を引きずっているという、可愛らしさの欠けらも無い行動をしていた。引きずられている生き物は、イノシシに似ている容姿をしていた。
(ヤバい…殺される…)
「ごめんなさい!俺、気付いたらここにいたんです!お願いです!許してください!」
とりあえず謝っておいた。
「まぁ、そんなに怒ってないから謝んないで。そうだ!丁度狩りが終わったから一緒に街に行く?」
「えっ!いいのか?!俺と君は初対面だぞ?!」
「いいの、いいの。どうせ街に行くんでしょ?」
神だ。この子は女神だ!
「お願いします。あっ!そうだ!俺は慧音と言います。好きなように呼んでください」
「分かったわ、けーね。僕はフラン。フランって呼んでね」
その後、特に会話もせず、2人で街まで歩いた。
どのくらい時間が経っただろうか。ようやく街にたどり着いたのだが、俺の体力はほとんど0に近い状態となっていた。
「ハァ…ハァ…。ちょっと休もうよ…」
「けーねは男なのに情けなーい!」
フランが元気に返事した。どうやら休ませてくれなさそうだ。
「なら、この街を案内してよ。俺はここに来るの初めてだから」
「え?休まなくていいのか?」
やはりフランは女神である。
「ちょっと休ませて」
俺はそう言って道端に座って休憩した。隣にフランがちょこんと座った。俺たちはこのまま少し休憩した。
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