異世界テイマーのスローライフ

虎龍

第1話 さよなら、人生。

特に大事件が起きる訳でもない、常に平和な街に暮らしている俺、藤原慧音ふじわらけいねは、何の変哲もないただの高校生である。テストの点数はいつも平均、運動能力も平均である。髪は茶色、目は黒、鼻はあまり高くなく、お世辞にも顔立ちがいいとは言えない。身長170cm前後、体重約60kgと、見た目も至って普通である。ちなみに、部活はしていない。そんな超普通な俺は、動物が好きという、こちらもまた、とても普通な性格である。だが、他の人達に比べられないほど、俺の動物愛は深すぎる。


そんな俺は、いつも通りの道を1人で帰っていた。まずはコンビニでサラダチキンを買う。そして、家に帰る。それだけだ。家に帰り着くと、突然


「クゥーン」


と、どこかで鳴き声がした。気が付くと俺の足元に何かが居た。俺はそれがなんなのかすぐに分かった。


「よしよし。今日もいい子にしてたか〜?ジョン」


「ワンワン」


「お前は今日も元気がいいな〜。はい、今日の分」


俺はそう言って、先程買ったサラダチキンをジョンにあげた。ジョンは美味しそうに食べている。


「そうか、そうか。そんなに美味しいのか。いっぱい食べろよ」


一時して、ジョンがサラダチキンを食べ終わると、俺は


「それじゃ、今日も散歩に行くか」


と言って、家からからリードを取り出した。それを丁寧にジョンに付けてあげる。

散歩のコースはこうだ。初めに、近所のペットショップに寄る。何も買わない時がほとんどだが。その次に、公園に寄って一休み。そして少し遠回りをして帰宅。これがだった。


公園から家に帰る途中、いきなりジョンが暴れ始めた。今までこんなことは無かったのに。


「こら!ジョン!暴れるな!」


俺はポチに怒るが、ジョンは全く言うことを聞かない。すると、ジョンが道路に飛び出した。丁度、トラックがこっちに向かって走って来ていた。


「キィーッッ!」


「危ない!」


俺の声とトラックのブレーキ音が重なった。俺はジョンを助けるために道路に飛び出していた。


(ヤバい!このままでは…)


そう思った瞬間、体全体に電流が流れたような痛みが走った。痛みで目を開けることができないが、ジョンは無事だった事は分かる。ずっと俺の顔を舐めているからだ。


「おい!大丈夫か?!」


車から運転手らしき人が降りてきた。


「待ってろ!今、救急車を呼ぶからな!」


俺は、大丈夫ですと言いたかったが、喋ることすらままならなくなっていた。俺はその場に立ち上がろうとしたが、立ち上がることさえ難しくなっていた。少ししてから救急車のサイレンが聞こえてきた。


(俺、どうなるんだよ…)




やがて、俺の意識は完全にこの世から切り離された。

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