第2話近くて遠い

 一限は何だっけ。物理か。だるいな。物理の授業はとてもめんどくさい。物理担当の原はとにかくウザい、ウザすぎる。

 この前も俺が遅くまで推しの配信を見てたから寝不足で、授業中に睡眠時間を確保していただけなのに、授業が終わったらすぐ話しかけてきて、放課後職員室呼び出し。呼び出すぐらいなら授業中に起こせばいいだけなのに、なんでお互いに対してデメリットしかないことをするのだろうか、考えたってアイツの思考なんて読めないからやめよう。

 重い。学校への足取りもまぶたも。流石に昨日の七時間配信は楽しかったが、キツかった。推しが長く見れるのは幸せだが、睡眠時間という代償は大きかった。先週呼び出しを食らったんだ今日は流石に授業中寝るわけにはいかない。気合いを入れるかのように自然と背筋が伸びる。

「おっはよっ! 宏樹!」

 後ろから声が聞こえる。いつもだ。この路地を差し掛かると遭遇してしまう。

 俺の名前を読んできたのは、我ら田所第一高校で一位二位を争うと言われている成績を誇り、容姿端麗、家はこの辺では名前を知らない人がいないほど有名な地主であり、大企業ヒムデラホールディングスの日向寺祐華。昔からの知り合い、いわゆる、幼馴染ってやつだ。ベランダで行き来できる訳じゃない、まず、家が隣じゃない。

「どーしたの? そんな暗い顔してさ、冬眠前のクマさんでも宏樹ほど顔暗くないと思うよ?」

「やめてくれ、そんなに寝たら推しの誕生日が過ぎてしま……いやいや、季節的に冬眠はおかしいでしょ」

祐華はいつもこうして俺に話しかけてくる。

「えへへー 昨日もまた配信で寝落ち?」

「寝落ち? そんなことあり得る訳がないやん! 最初から最後までじっくりと見る。これがリスナー魂だよ」

俺が返答したら、祐華は少し俯いてしまった。

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その花は青い 翁(Okina) @naodorachan

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