その花は青い

翁(Okina)

第1話曲がり角には福来たる

都立田所第一高校。

ここは、都心から電車で四十分ぐらい離れた長閑なところにある。コンビニの少なさがちょっと難点だけどね。カラオケとかぜんっぜんないのもマイナスポイント。

 俺? 俺は宏樹。本田宏樹。いたって普通の高校二年。成績はまあまあ。中の下ぐらい。テストなんて直前にやればなんとかなる精神。みんなもなんだかんだそうだったんじゃね? 知らんけど。

そんなことより大事なことがある。

 そう、今日の夜は推しの大事な配信。絶対に早く帰って待機画面から万全を期して見る。配信のサムネイルから推測するに、夏の始まりの時期の重大発表……ということはまさか、水着衣装か? まさかな、あの清楚な控えめボディが水着によりいつも隠されている肌が露出するということは、恥ずかしがって声が震えたり……想像するだけでニヤけてしまう。いや、俺としたことが、不純な目で推しをみてしまうとは、紳士としたことが。まず、水着と確定したわけではないんだし、過度な期待はやめよう。上げて下げるって言うのが一番辛い。(まあ、勝手に上がってるだけだけどね)

  それにしても今日は暑いな。いつも前髪をギチッと固めて、どんな風に吹かれても乱れないようにしている、美人だと毎朝ネットで話題になっているお天気のおねえさんも、日傘や、小型扇風機が思わず買いたくなるぐらいの暑さだと言っていた。俺はあんまり美人だとは思わないがな。オタクたるもの、推し以外の女性は眼中になどない。だが、決してガチ恋勢なるものではない。推しとは画面を通して関わることで成立する関係。これを楽しむのが本当の紳士オタクの推し活。いや、嗜みなのだ。

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