第⑤わん! ~プロローグがやっとこさ終わるなのである~

『なんで、こんな事に……。何故、名前が「ポチ」なのだ?いつからそんな名前になったと言うのだ?!一体全体、ワケが分からんッ!!』



-・-・-・-・-・-・-



 それは今からさかのぼる事、数日前。彼の者は巨大巨人族ティタニアに再び捕まっていた。



「ドゥオレ、ソアーロソアーロヌエイムエイイウォトゥスケトゥイイエイアーエイントゥオヌエイ」(※①)


巨大巨人族ティタニアめ、突然拘束したと思ったらまた魔術か?!ええい、忌々しい!』


『今度こそ、本当に目にもの見せてくれる!』


「オスジュエイクエイアーエイヌエイ。トゥエイアーオウ?」(※②)


『何?!2度目の詠唱だと!?今度は吾輩を徹底的になぶるつもりだな?そうはいかんぞ!吾輩は決して屈さぬ!!』


「フエインンオウグエインエイインオウ。ドゥエイムイジュエイトゥトゥエイクエイ。ブイアーイ?」(※③)


『3度目の詠唱だと?!今度は徹底的に吾輩の力を削ぐつもりか!だが、吾輩は負けん!如何いかなる魔術が来ようともあらがってみせる!』


「ヌエインジュエイ?ブエイエイスエイン!フエイイクエイアーエイヌエイヌエイムエイイフエイドゥエイムイジュエイトゥオ?ジュエイエイヌエイヌイグエイイインジュエイ?トゥエイムエイ?」(※➃)


『4度目の詠唱……しかも、後ろにいる誰かと魔術の共詠唱……な、ワケはないな。魔術の詠唱かと思いきや、ただの巨大巨人族ティタニアの言語であったか……はぁ』


『今まで焦っておったのが、バカらしく思えてきたわ。それにただの言語だと思った途端に眠くなってきたぞ』


「トゥエイムエイフエイヌイコジュエイトゥオ?ジュエイエイフオクエイヌイフエイ……。ポクフイ?」

」(※⑤)


『ふあぁあぁ。あくびが出てしまったわ。何を言っているか分からぬ会話など、ただの催眠音波に過ぎんな』


「オオ!ソウクエイソウクエイ!ポクフイグエイイイクエイ!ジュエイエイ、オムエイイフエイ「ポクフイ」ジュエイ!!」(※➅)


 と、そんな事があったのである。



『とは言え、勝手に付けられた名前などで、吾輩を縛る事は出来ぬ!吾輩には崇高すうこうな名前があるのだ!』


“ポチ!五月蝿うるさい!全く、ハナは疲れておると、言っておるに”


『ハイ、ゴメンナサイ、オカアサマ』


 ポチは母親の頭の近くで騒いでいた為に怒られ、渋々と自分が占拠していた場所へと帰っていく。



“ポチ!兄弟に対して牙を立ててはいけませんよ!”


 トボトボと歩くポチの背中に向けて母親が言っていた忠告を、その耳が聞いていたかは別として。



『解せぬ!やっぱり解せぬ!そもそも、何故、吾輩はこんな姿なのだ?』


 ポチは頭を悩ませていた。そしてその悩みは一周回って、最初に戻っていった。



 この頃から、ポチやその兄弟達は母乳を卒業させられた。よって食物は離乳食と呼べるモノへと変わっていた。



『な、なんなのだ?このドロドロとしたモノは?これをまさか食べろとでも言うのか?』




 ポチ達兄弟は生後1ヶ月程が経った今、産まれたての頃のひ弱さは何処かへと旅立っている。言い換えればスクスクと成長していた。


 足腰には力が入り動きは活発である。そして、口の中には全体的に乳歯が生え始めていた。


 その為、母親は母乳をあげるのを嫌がった。いくら母親が子供達に無償の愛母乳をあげていても、食事の度に乳首を噛まれ激痛が奔るのには耐えられなかったのだろう。

 その代わりに巨大巨人族ティタニアが銀色の皿に入った、ドロドロとしたゲル状物質を各兄弟達の前へと置いていく。



「スエイエイオムエイイトゥエイクフイ、「グオフエイン」ドゥエイツオイ!!」(※➆)


 初めて目にした離乳食に対し、ポチを含め兄弟達は戸惑っていた。


 ポチは生前の記憶がある為に辛うじて食物かどうかの判別が出来るが、目の前に出されたモノはお世辞にも「美味しそう」と呼べるモノでは無かった。

 それは、どちらかというとな感じがして、心のザワ付きが止まなかったのである。


 更にその場にいる兄弟達はそれを食物とは理解しておらず、食べようとしなかった。

 まぁその事は当然と言えば当然であり、それはまるで食べない事が理に適っている事であるかのようだ。

 即ち自然の摂理、自然の法則の如きモノと崇高な意思が話していたコトだろう。



 結果……。

 一人の兄弟が銀色の皿に興味本位で足を掛けた事により、悲劇が起きた。


 お察しの通り「ばしゃッ」と、音を立て中身がこぼれたのだった。



 置かれた皿は全部で5つ。その皿のうち、1つがひっくり返った。そしてその光景を見た他の兄弟達も、「これはだ」と認識した。

 その後の悲劇はご想像にお任せしたい。



 寝床は直ぐさま、びちゃびちゃになっていった。


 幸いな事に元から入っている量が少なかったから、そこまで水浸しと言う事はない。

 それでも足元は濡れており不快感はぬぐえなかった。



 ポチは食べるべきか、食べざるべきかを悩んでいた。そして覚悟を決め口を皿に近付けた時、他の兄弟が皿に足を掛けたのだった。



びちゃッ!

びちゃあッ


 案の定、まるでフラグが成立していたかのような出来事だった。タイミングよく足を皿に掛けられ、テコの原理よろしく中身はポチの顔面へと襲い掛かったのだから。



『うわッ!吾輩の食物が!吾輩の顔に!!取れん!取れん!』


 ポチは顔に付いた離乳食を必死に前足で取ろうとするが、そこまで自由度の高くない前足では顔を拭う事は出来ない。

 舌で舐めようにもそれも届かない。


 それでも頑張って多少は舐め取る事が出来たが、その時!



『不味くはないな。普通に食べられる……だがッ!!味が薄過ぎる!!!!』


 などと、普通に感想を覚えていた。




 さて、ここまでがこの話のプロローグである。


 これから先、このポチを含む兄弟達がどうなっていくのかは分からない。いや、分かってはいるが分からない事にする!



 そんなこんなで、これから先のストーリーは副音声でお送り致します。←どうやって?!


 いや、単純に訳を書くのがめんどいとか言わないぞ!言わないぞッ!!言わないぞーーーーーッ!!!


 さて、そもそも、こんな無駄話をしているのは誰かって?それは、また後で……。




訳①:どれ、そろそろ名前を付けてやらんとな。

訳②:オスじゃからな。タロウ?

訳③:反応が無いのう。駄目じゃったか。ビリー?

訳➃:何じゃ?婆さん!な名前は駄目じゃと?じゃあ何が良いんじゃ?タマ?

訳⑤:タマは猫じゃと?じゃあ他には……。ポチ?

訳➅:おお!そうかそうか!ポチがいいか!じゃあ、お前はポチじゃ!!

訳➆:さあお前達、「ご飯」だぞい!!

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