こんなステーキハウスには絶対行きたくない

叙述トリック大好きギャル…満74歳現役女

第1話(完結)

 たまには贅沢ぜいたくしてステーキでも食べようかな。先日、ちょっと気になるお店を見つけ、いつか行こうと思っていたのだ。俺はお店の自動ドアをくぐった。入店を伝えるBGMが流れる。


「いらっしゃいませ。お客様、1名様ですか、それとも何様ですか?」

―お前が何様だよ!失礼だなぁ、1人だよ。


「かしこまりました。空いているお席にお座りください」

―全部空いてるよ!どー見ても客は俺しかいねぇじゃねーか。まあ、いいや。この席にするか。


「お客様、密を避けるために…」

客は。どうやったらこの店が「密状態」になるんだよ。それと、入店のBGM、何でと一緒なんだよ。ここはステーキハウスだろ。


「それは大変失礼いたしました。ただ今、おひやをお持ちいたします。グラスはいくつお持ちしましょうか」

―1個だよ!俺以外に誰がグラス使うんだよ。早く持ってきてくれよ。


「かしこまりました。ではグラス1個と、お冷をピッチャーでお持ちします」

―いらねぇよ!ピッチャーなんて。どんだけ水飲ますんだよ。生ビールじゃねんだから。それより早くメニュー持って来てくれよ。


「かしこまりました。はい、メニューでございます。本日は担々麺タンタンメンがおすすめでございます」

―何で担々麺なんだよ!ここステーキハウスだろ、違うんかい!俺は肉を食いに来たんだよ。まぁいいや…うーん。じゃぁこの、ステーキランチにしておくかな。


「ステーキランチ、ニンジンとコーンシでございますね。かしこまりました。」

―だったら肉を増やせよ。ニンジンもコーンも普通盛りで良いんだよ。さっきからおかしいぞ。いちいちボケなくて良いんだよ。


「お客様、お肉の焼き加減を選んでください。レア、ミディアム、ウェルダン、オールブラック…」

―丸焦げじゃねぇかよ!オールブラックって。そんなの誰がオーダーすんだよ。俺はミディアムで良いよ。


「マ、マ、マダムですか…。マダムは相当熟しておりますので、お早めにお召し上がりください」

―何の話だよ。もう良いよ。いい加減にしろ!違う店行くから、もう良いよ!


「またのご来店お待ちしております」


 とうとう頭にきて店を出た。

 ファミリーマートのBGMが、俺の神経をさらに逆なでた。

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