END




「やあやあ、ガンマ君」



なんて、久しぶりに呼んでみたんですが、どうでしょうかアナタ


ふふふっ……そうですね。懐かしいですね


あの頃はたくさん喧嘩しましたし、アナタにはたくさん泣かされました


ええ、ちゃんと覚えていますよ


でも、楽しかったなぁ……私の隣にはアナタが居て、何をやってもダメな私の傍に、ずっと一緒に居てくれて、アナタと出会えて本当によかった


だから……もうちょっとだけ一緒に居たかった


ふふっ……やった


最後に、アナタを泣かせる事が出来ました


いつも、いっつも私が泣いてばかりでしたから


ほら、アナタ、私に言うことがあるんじゃありませんか?


あぁ……これでもう思い残すことはありませんね


それではアナタ、先に行って待ってますから



「ボクは寂しがり屋だからね。早く来てくれよ?あんまり待たせたら承知しないからね、ガンマ君……」



横になった彼女はしわくちゃになった両手で震えながらも俺の事を抱きしめる。





「またね」





最後に彼女は俺の耳元でそう、ささやいて。


するりと両手の力が抜けていく。


それを取りこぼさないように掴んだ。


握りしめた手から体温が抜けていく。


その表情は満足そうな微笑みを携えていて、彼女は眠るように息を引き取った。



「直ぐに行くよ……おまえの事は1人にしておけないから……」



ポツリと呟いた言葉と共に雫が落ちる。


止めどなく瞳から涙が溢れた。


最後まで、泣いてやるつもりなんて無かった。笑顔で見送ってやりたかった。



だけど、



ポンコツでヘタレでクソザコで、


生意気で無駄に自己評価が高くて、他人の事を見下して馬鹿にするわりには、直ぐに心が折れて泣き出して謝ってきて、


でも、そんな所が可愛かった。


無邪気に笑う笑顔が好きだった。


好きで、好きで、しょうが無かった。


彼女と歩んだ俺の人生は幸せで、楽しくて、本当に奇跡みたいな時間だった。



「今まで、ありがとう」



意図せず言葉が紡がれる。


最初から最後まで彼女は俺の心を掴んで離さなかった。


初めから、わからせられていたのは俺の方だったのかもしれない。


出会って彼女の傍に居ようと誓った、その時から。


俺を残して先に逝ってしまった彼女に対するこの感情は悔しさか。


死んだからって俺から離れられると思うんじゃねぇぞ。


調子に乗りやがってクソザコが絶対にわからせてやるからな。


俺は何があってもオマエの傍に居る。


だから、これはしばしの別れで、俺たちがまた出会う為に。


彼女に向けて言葉を送る。






「またな」


















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調子に乗りやがってクソザコが わからせてやるッ! 助部紫葉 @toreniku

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