互いに楽しみな来訪

布団カバー

互いに楽しみな来訪

こんなにもワクワクしながら来訪を待つのはいつぶりだろう。クリスマスの夜、両親がプレゼントを買ってかえる時、それとも大好きなゲームの宅配の時、それ以上に私は楽しみにしている。

待っているのはアンドロイド。

昔から家にいながらアンドロイドの発注から発送は出来たが、目の虹彩や一本一本指の長さといった細かなカスタマイズは今の時代の技術力ゆえ可能になったシステム。

そんな技術力を生かして自分の性癖を詰め込んだアンドロイドを発注した次第。

ショートポニーテール、スカーフェイス、オッドアイ、メカクレ、取り外し可能な手足、剝き出しの配線、肌色の改変機能、切り取り線タトゥー、ギザ歯、声は某有名声優等々、まさに自分の性癖が形どったアンドロイドが来るのだ。

楽しみに決まっている!!

そんなわけで昨日から寝られずこうしてソワソワし続けている。


ピンポーン


ついに待ちに待った時が来た。。

足早に玄関を駆け、鍵を外し、ドアを開く。

ドアを開いて、眼前に現る姿はこの世に降り立った天使。

「あー好き」

言語野と思考が直列回路となり、思ったことをつい口に出してしまう。

「こんばんわ~マスター」

声も天使な天使が私をマスターと呼ぶ。なんと素晴らしき哉。聴覚があったことをこれほどうれしいと思えたことはない。「マスター、入ってもいい?」

「はい、YES、お願いします」

光速で承諾。

そして、天使はドアを跨ぎ、部屋に入る。

「これからよろしくお願いします~」

天使は私と数㎝ほどしかない距離まで詰め寄り言う。

「そして、さようなら」

天使はニッコリ笑いながら冷めた目で告げた。


ガブッ


首に痛みが走る。

「・・・え?」

天使は私の首元にかぶりついていた。

いや、それ天使ではない。

化け物だ。

あっけに取られていた私は助けを呼ぼうとするが声は出ず、振り払おうにも力は出ない。

そうしている間、天使を模した化け物はズーズーっとまるでジュースをストローで吸っているような音を立てながら血を吸っている。

ズーズー

ズーズー

音が立つたびに私から血(命)が消費される。

ズーズー

ズーズー

ああ死ぬんだ、まさか性癖の塊に殺されるとは。でもまあそう考えば悪くないかも・・・

最期に思えたことはそんなことだった。


「あー美味しかった。やっぱ童貞は良いわ~血が美味しい上にちょろい」そう言って血のついた口を拭いながら、血の気が引いた亡骸をッポンと雑に置いた

「ホンットに良い時代になったものだわ。処女童貞の数は増えて、簡単に玄関を通してくれるシステムも確立されて便利便利」

ッポン

新しい獲物を知らせが鳴る。

餌がまたかかったかと思いながら身支度を整える。

「それじゃあ~ね~マスター」

最後にミイラのような亡骸にそう言った後、姿を次の餌用に変えて玄関を出た。


同じ時、次の餌はそんなことを知らず、自分にも同じ目に遭うとはつゆ知らず、こんなにもワクワクしながら来訪を待つのはいつぶりだろうと思いながら待っているのであった。

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