⑩そしてこれからも……


 でもまぁ、おばあちゃんのした事はお兄さんや真人くんが関わっている『黒いカタマリ』関する世界の話であって……普通の人たちにとってはそもそも分からない世界の話だ。


――でも、それも仕方のない話なのかも知れない。


 なぜなら『普通』なら見えないのだから。


 お兄さんの話を聞く限り、私と真人くんの様に「見える人」が同じ学校で同じ学年にいるという事はものすごい確率なのだと思い知った。


 ――でも。


 今となってはふと思う。


 ――これもおばあちゃんが考えていた事なんじゃないかって。


 もちろん「考え過ぎ」と言われてしまえばそれまでの話だ。でも、お兄さんが私の家を訪ねてきた理由やタイミングは……今となってはちょうど良かったのかも知れない。


 ――それを踏まえて考えると……もしかしたら、真人くんの事は予想外だったのかも。


 ただ『お守り』の効力が弱まっていたのは事実で、新しいお守りをお兄さんからもらった。


 だから、お兄さんからもらった『お守り』を見ていると……ふとそう考えてしまう。


「……」


 真人くんはクラスの人気者で……ただ学校では口数が少ないと思われている。


 ――実際はよくしゃべるし、口も悪いけど。


 だから「話す事が嫌」というワケではないのだけれど、それでもあまり話をしないのは……多分、過去の反省からだろう。


 ――多分。


 たまに態度がおかしくなったり口ごもったり事もあるけれど……決して仲は悪くないと私は思っている。


「これから……か」


 なんて事を考えても多分大きく何かが変わる事はと思う。


 お兄さんみたいに「祓いたい」という気持ちがあるワケでもない。ましてやおばあちゃんみたいに何かをしたいというワケでもない。


「ただ……」


 ちょっと変わった事が起きたとしても、これからも今までと変わらずに過ごせたら……なんて思う。


 ――相変わらずお父さんもお母さんも忙しいけど。


 それでも私は「普通」とは違う今の生活が意外に気に入っているだなと思うと……私は思わず笑ってしまったのだった。

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不思議なカタマリ 黒い猫 @kuroineko

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