アレキサンダー諸島シトカ~イースト岬  日本~エピローグ

 -------------アレキサンダー諸島シトカ

「時雨。いいかげん起きないと。」

 ここどこ?

「アレキサンダー諸島だ。」

 奥から白衣の男性が出てきた。

「キミが時雨かい?えぇーと日本語で言うと。」

 ん?今英語で言ったの?

「キミガトキサメカイ?」

 やっぱりだ。今英語が分かった。

 そのあとたどたどな日本語で質問されたがよく覚えていない。

「ふむ。英語か。スピードなんちゃらっていうのは分かるか?」

「ラーニング?寝てる間に英語を勉強ってやつ?」

「それを疑似体験したんじゃないか?」

「えっと。つまり?」

「時雨が寝てる間英語が飛び交っていたはずだ。」

「つまり、スピードうんちゃらを疑似体験ってこと?」

「うむ。」

 っと!集団が目に入る。上に看板が・・・。

『オーロラのコンパス。取れたら差し上げます。』

「空。オーロラだって。やってみる?」

「やれば。」

 コンパスを引っ張ってみる。取れない。

「取れないね。」

「ふむ。時雨。虹の奴を見せてもらっても?」

「うん。」

 空はコンパスをくっつけて満足したのか降りてきた。

 空からコンパスを受けとる。

 ”o-rora”

 くるくる回っていたコンパスは一点を指していた。

 オーロラのコンパス?

「空・・・。これって。」

「時雨!さ・か・な!さ・か・な!」

 聞いちゃいない。とりあえずポケットに入れておこう。

 ――――――――――――アラスカ湾

 コンパスは北西を指している。

 つまり少し西を行けばアラスカ湾を横断できるというわけだ。

「時雨?出発か?」

「うん。とりあえずアラスカ湾横断しようかなって。」

「ふむ。」

「じゃあ出発!」

 ざーー----ん!

 ―――――――海

 陸地が見える。遠くの方に。まだここか。

「時雨。コンパス。」

「ああ。落とさないよ。」

 一応首からぶら下げとこうか。たしか宝箱にひもが入っていたはず。

「宝箱っと。」

 宝箱には紙が一枚。

 タヌキの絵。

 宝箱には紙だけ。紙を取る。タヌキの絵。

 寒いギャグ!!!!!!!!!!

「空?」

 天井に空が張り付いている。

 空が下りてきた。

「中身は?」

「机。」

 机の引き出しに宝箱の中身が入っていた。

 親切心でしたのかそれとも悪戯でしたのか。

 まあ空もそういうお年頃ってね。

 虹が見えていたけどまあ気にしなかった。

 ――――――――――――海

 下に見えてる波に目をやる。海を切るように波が立つ。

 ざざーん。

 すれ違うのは漁船それに海賊船。

 海賊船にあったら全速前進。そうしないと死ぬ。

 前に障害物があっても直進する。そうするしかない。

 いままで目の前にそういう障害物があったことはない。

 空はそこらへん計算して操縦してるのだろうか?

「空―?操縦変わろうか―?」

「いやいい。それより虹だ。」

 虹?空が二センチほど舵を切る。

 そうか。虹に引き寄せられてるんだ。

「・・・。」

 空の首にコンパスを掛けてあげた。

「時雨?これは確か時雨の形見では。」

「うん。でもいいんだ。必要なのは空だから。」

 空のあたまをぽんぽんとなでた。

 ―――――――――――海

 最近は船長室に入り浸っている。

 なんか知らないけどほかの部屋にはエアコンがない。

「虹。」

 えぇーと今ので通算十二回!?ま、まあそんなもんだろうと思っておこう。

 ―――――――――海

「時雨!陸地だ!」

 ―――――――――アリューシャン山脈

 陸地についた。ここはどのへんだろうか?

「空?ここどこ?」

「アリューシャン山脈らしい。」

 地図を確認する。予定ではコディアック島につくはずだけど・・・。

 アリューシャン山脈はコディアックを越えた先?

 なぜか島を越えたところについていた。

「で?こっからどう行こうか?」

「とりあえず北へ行こう。」

 地図は見てないけどまあいいか。

「じゃあ買い物してしゅっぱ・・・あー---!!お金ないじゃん。」

「ふむ。」

 空の手には大きな釣り竿が握られていた。

「ちょっと行ってくる。」

 一時間ほどで帰ってきた。マグロよりおおきな魚を背負って。

 さすがに疲れたのか船に載せるときには息切れしていた。

 ――――――――――レイク・クラーク国立公園

 虹。

 ――――――――アンカレッジ

 ざざーーーん。ざー--ん。がががががー--!!!!!!

 がががががー?

「時雨!座礁した!」

 外を見るとオーロラが・・・。

 オーロラが・・・。

 意識をつかんで連れ去っていった。

 ――――――――――――――――――――――キング島

「今日も平和だなー。」

 みんなが空を見上げている。

 ざー----------ん!!!!!

 雨?いや・・・。

 港に空からなんか降ってきた!

「ふぅー死ぬかと思った。」

 空が港に降りる。

「時雨はまた寝てるのか。」

 オーロラか。もう少しでたどりつくな。

「旅人か・・・??」

「イエス。」

「どこに向かってるんですか?というか今空から・・・。」

「北極を目指してる。」

「北極?確か西の方の・・・。」

「そうだ。北極だ。」

「どうやって海を渡ってきたんだ?」

「オーロラのコンパスを使って。」

「旅の人・・・それをどこで?」

「シトカだが?」

「ふむ・・・。シトカといえばむかし息子が旅で・・・。息子は元気でしたか?」

「ああ。たいそうな。」

「そうですか・・・。今度こちらにも顔を出すように言っておいてくださいますか?」

「会えたらな。」

「オーロラといえば石碑がありましてな。こちらです。」

 オーロラの根本にIZINの鍵を供えよ。

 オーロラには世界の半分が眠っている。

「ふむ。」

 時雨ならわかるかもしれないが、まあ起こすまでもないか。

「出発する!」

 ざー-------ん!!

 北西へ。旅の最後へ。

 ―――――――――イースト岬

「時雨!起きろ!」

「ん、朝?ふぁー--・・・。」

「コンパスを見るんだ。」

 コンパスはくるくると回っている。

 くるくる。くるくる。くる?

 つまり虹と同じなら・・・?上?

 オーロラが耀いている。雪もちらほら。

 ここはもう北極。北の果て。

「降りてみよっか。」

 梯子を降りる。

「よっと。」

 オーロラの根本には鍵穴があった。

「オーロラの鍵なんて・・・持ってないよ?」

「IZINの鍵。」

「いじ・・・なに?」

「オーロラの根本に供えろって。」

 しゃんしゃんと雪が降る。NIZIの鍵を透かして見る。

 IZIN?虹の反対・・・?

 NIZIの鍵を置いてみる。

 ざー------ん!

 天からバケツをひっくり返したような水が降ってくる。

 尽きることのないまるで滝のような。

 上・・・。オーロラは空より高い場所から水を吐き続けている。

 ぴちゃん。

 収まった。のだが・・・何かある。箱?

「空、箱が・・・。」

 空は箱を開けた。


 それは


 まるで


 世界の終わりの様に。


 降り注ぐ。


 もう一つの世界が。


 ・・・空!

「時雨。終わらない秋は終わったんだ。だからもう。」

「うん。帰ろう。でもこっから日本に船では・・・。」

 船は陸地を上がっていた。

「???」

 船に尾翼なんてあったっけ?

「帰る。」

「待ってよ空!」

 船に乗り込むとエンジンをかけた。

 ぎゅるるるる。

 船の排出口から尾翼に空気を吐き出す。

 この船はそう、赤城。

「空中を走る船!」

 そういうと船は空へめがけて飛んだ。

 そう。日本へ向けて。

 ――――――日本

 春か。ずいぶん長い秋だったな。

 時雨は成人の年齢になっていた。

 空も育つのが楽しみで仕方ない。

 というのも空は私が育てることになったからだ。

 この家から始まった旅。アメリカ横断。そして世界は”一つだった”。

 もとから一つだったように。そう、あの箱を開けたからかはわからない。

 ”そして世界は丸くなる”地球。


 完

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虹の根本のマスターキー 中村翔 @nakamurashou

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