第3話 恋とは?


 さてもさても、読者諸賢よ。

 この広い電子の大海原おおうなばらの中、よくぞ荒涼たる我が領域に辿り着いたものである。

 なにゆえこんなしみったれた所へ?


 さて、存在するかどうかも分からない読者に語りかけても仕方がないので本日は私の恋愛観について語りたいと思う。極度の恋愛アレルギーの方には速やかなご退室を進言しよう。


 私は男女共に恋愛的に人を好きになったことがあるが、現在は明らかに女性の方に趣向が傾いている。といっても私の過去こんな魅力的な人物がいて私が華麗に暗躍しその人物を手中に収め──なんて話は誰も興味がないであろうし、私としても青春の苦味を凝縮したような傷だらけの思い出に自ら進んで触れたくはない。



 恋愛とは一体なんなのだろう。

 世間を見渡せば甘い果実を貪るような一時いっとき限りの恋愛に身をやつす者が多く見受けられるが、それは恋愛というよりは肉欲に近い。


 思うに恋愛とは、人生におけるイベントの一部分に過ぎず、その先には必ず生活が待っているのだ。恋の成就じょうじゅには関係なく、進む先には生活が待っている。燃え盛るような激しい恋心を抱いたとしても、その先に待ち受けるのは生活、つまり人間としての営みである。そう思うと少しは気が楽にならんかね、恋する乙女たちよ。

 恋は盲目、生活は一生である。


 しかし頭ではわかっていても恋に溺れる者は多いのだから、人間とは案外単純な生き物だなぁと実感するこの頃だ。



 ちなみに私のタイプは、儚くて今にも消えてしまいそうな雰囲気の女性である。

 春の空のようにふわりと溶けてしまいそうな風貌の、いわゆる薄い顔が好みだ。肌は白い方がいい。優しい笑みを絶やさず、しかし心の奥底には誰の侵入も許さないような、どこか孤独や憂鬱を抱えた人物がいい。そのうえ読書好きで本について語り合えたりしようものなら大変だ。そんな女性が目の前に現れでもしたら、私は万策を尽くしてなんとかお近づきになろうとするであろう。相手にされるかどうかは考えないものとする。


 まぁ、日夜にちや家に篭って鬱々と本を読んで過ごしている私には、なかなかに遠い世界の話であるが。



 あゝ神様、どうか儚くてどこか他人を寄せ付けない雰囲気の読書好きの女性との縁をお恵みください。

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愚か者見聞録 藤崎愚淋 @s_1

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