クールな幼馴染と夜②
時計の針がチクタクと鳴っている。
沈黙が部屋を制すなか、それを破ったのは「ねぇ……」という僕の声だった。
「何かしら?」
「帰らないの?」
「こんな時間に帰れと言うの?」
──しかも女の子1人にさせて?
小さく口角を上げる幼馴染。
でも、僕も言いたい事がある。
「ご両親が心配していると思うけど……」
現在の時刻は真夜中の25時。
ほとんどの人が既に就寝している時間だ。
こんな遅くまで外出して、親も心配しているだろう。
しかし──。
「大丈夫よ。 ちゃんと貴方の家で泊まると言ってきたわ」
「よく……許したね」
普通、年頃の娘──しかも、かなりの美少女を1人させるか?
いくら昔からの幼馴染とは言え、異性だ。
もし、僕が1人娘を持つ親なら決してさせないだろう。
鈴華のご両親はかなり厳しいイメージなので、その基準というのがよくわからなかった。
それに僕たちの関係はかなり不安定だ。
数時間に告白し、それを保留にしている。
幼馴染だから、いつもみたいな関係で居られるのだ。
もしかしたら、明日にはこの関係は無くなってるかも。
「それと……貴方のお部屋に案内させてくれる?」
「そこで寝るの?」
僕の質問に「そうよ?」と当たり前ような口調で答える鈴華。
「分かった」
自室に向かい、彼女用の布団を用意する。
布団はこの前買い換えたばかりの物。
……まさかね。
「それと……私が泊まる事は貴方のお義母さまも、私の両親も知っているわ」
「そうなんだ」
何で知らせなかったんだ。
母さんのテヘペロとしている表情が思い浮かぶ。
今も何処かでそんな表情をしているだろうか?
まあ良いや。
布団を地面に置き、シートを被せる。
いつも布団だから、こう言う動作は慣れている。
布団の用意はあっという間に完了した。
それで……僕はどこで寝ようか。
流石に一緒の部屋で寝るわけには行かない。
リビングかな?
そんな事を考えていると、彼女の言葉が聞こえてきた。
「でも、考えてごらんなさい? 私と貴方の両親の不在に、貴方への『よろしく』と書いてある手紙」
唐突に言い始める鈴華。
しかも彼女は、枕元付近で正座になっている。
「それに男女が2人同じ部屋にいるのよ?」
「何の話を?」とは言えなかった。
察してしまったのだ。
これからどのような事が起こるのか。
そして、それはまるでパズルの最後のピースが埋まるような感覚だった。
「ようやく分かったね? では答え合わせしましょう?」
ふふっと笑みを浮かべながら、近づいてくる幼馴染。
彼女の顔が目の前に近づいたと思った時には、いきなり視界が大きく動く。
まるで、体が一気に反転したみたいだ。
そして次の瞬間には、ドサッと布団に倒れ込む音し、目の前には幼馴染の姿があった。
あーあ、せっかく綺麗にしたのに……。
もうグチャグチャだよ。
そんな事を思っていると「早速、始めましょう?」と、目の前でニヤッと笑みを浮かべる幼馴染。
「大丈夫よ。 こう言うのは初めてだから」
「そうなんだ」
ジッと鈴華の顔を見る。
するとだ。
身体の温度がだんだんと上昇していくのが分かった。
「本当はね? あの公園で答えを聞くつもりだっだけど、貴方の為に聞かないであげたの」
──だから、もう一度だけ言うわ。
「ずっと前から好きでした。 私と付き合って下さい」
「……」
何故だろう。
公園で聞いた時と同じ言葉なのに……凄くドキドキする。
特に彼女を顔を見るだけで。
ああ、たぶん見てしまったのだろう。
彼女を女の子として。
異性として。
どうやら、答えは1つしかないみたいだ。
グズグズ考えているのが馬鹿らしく思えてくる。
頬を赤らめている幼馴染に返答をしようと、僕も口を動き出そうとするが、その前にもう一度彼女の口が開いた。
「と言っても、選択肢は無いわよ? 貴方の答えは2つ。 “はい"か“yes”よ?」
「……」
何だろう。
せっかく雰囲気だったのに、一気にぶち壊されたような感覚になった。
何だよ……選択肢って。
でも良いや。
「これからよろしく」
我ながら素気ない回答。
僕たちの関係を変えるにはこのくらいの楽さが一番だろう。
それ以外は不似合いだ。
「貴方らしいわ……でも良いわ」
──大好きよ。
2つの影が1つになったのはその直後だった。
クール系幼馴染が恋人フラグを立てているようで 綿宮 望 @watamiya
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