青空からの声
結騎 了
#365日ショートショート 184
青空からおもりが落ちてきた。
石ころほどの大きさのそれには、紐が結びつけてあった。途方もない高さから落下し、真下の高層ビルの窓に激突。複数人が軽傷を負う事態となった。これはいったい、なんなのだろう。どこから落ちてきたのだろう。おもりから続く紐は、測りきれないほど長かった。
それからというもの、その高層ビルの最上階では幽霊騒ぎが相次いだ。くぐもったような声がどこからか聞こえるというのだ。物陰などではない、天井、いや、もっと上から……。もしや、これも空から聞こえているのだろうか。馬鹿馬鹿しい。そんな訳があるか。幽霊の声は次第にサイレンとなり、山奥から反響するようにビルに降り注いだ。
後日、今度はなにかのカスのようなものが舞い始めた。ふわり、ふわりと、黄砂のように高層ビルを包み始め、それらはゆっくりと都会に広がっていった。美しいスカイラインはぼやけ、辺りを見渡すのも難しいほどに大気が薄汚れていった。なにが起こっている。どうしたっていうんだ。学者たちは頭を捻るが、誰もこの事態を説明できずにいた。
そんな時、政府の特別対策室にひとつの情報が入った。「大手ゼネコンからの情報提供です」。電話交換手がそれを繋ぐと、政府高官が応対した。「なんだって、もう一度説明してくれ」
ゼネコンの社長は困惑していた。
「そ、それが、うちの下請けの社員からなのですが……。この一連の事件が起きる少し前、例のおもりが落ちたビルの近く、これも建設途中の高層ビルなのですが、その社員が休憩中に空から『おーい、でてこーい』という声を聞いたと言うんです。当時は気のせいだと思ったらしいのですが、どうにも私には、これが発端に思えてしまって」
青空からの声 結騎 了 @slinky_dog_s11
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