後編

デート日の朝。

俺は二時間前に集合場所である国際公園前駅に着いていた。

時間が近づくたびに心臓が体の中で飛び跳ねている。

気分を紛らわすためにスマホゲームをやり始めた。やり始めて十分のしないうちに飽きてしまった。どうしようと考えていたら時間が過ぎていた。


 駅の改設口から私服姿の春惠先生が出てきた。ネイビーな春ようコートに白いシャツとジーンズ、ピンクが主体でアクセスポイントに白いラインのスニーカー。最後に胸のところまで垂れているネックレス。同級生の女子かと思わされるようなファッションセンスだった。


 普通にかわいい。綺麗。


「おはよう。来るの早いね、山木くん」


 周りにいる男はきっと、一度は目線を奪わるだろう。俺はその一人だ。


「もしもし、聞こえている」


 先生は俺の顔の前で手をふる。


「あっ、すいません。おはようございます」

「大丈夫かい。体調が悪いなら今日行くのやめる?」

「全然大丈夫! むしろ元気です。少し先生の裏にあるお花に目を奪われていただけです」

「そうなの。なら行こうか。課外活動に」


 今チャンスだったのに……


「課外活動?」

「そうだよ。列記とした部活動だよ」


 先生はスキップするかのように目的のビルへ向かった。


「あとは山木くんが今日のプラネタリウム見学のレポートを書いて、課外活動として提出すれば報告は完了」

「俺がレポート書くの?」

「もちろん。先生が書いてもなんの意味のないよ」

「そうですけど……」

「これはあくまでも部活動。レポート提出しないと部費使えないし、貰えない。プラネタリウムのチケットは無料じゃないよ」


 俺は先生から貰っていたチケットの値段を見て驚いた。


「先生これって部費から下したの?」

「そうよ。年一回きりのビックイベントよ」


 そのチケットに大人二万五千円って書いてあった。


「だから、これはあくまでも部活動の一環なのよ。決してプラネタリウムが趣味なわけではないのよ」


 えっ? まさかね。聞き間違えだよな。


「先生。レポート書くの嫌いだから帰っていいですか」

「だめです」


 先生はわかりやすく落ち込んだ。


「さっき、元気ですって言ったじゃん」


 凄い。ここまで必死になるとは思わなかった。そこまでしてまで星を見たいものなのか。

ならいまがチャンス。この場面だったら先生は聞いてくれるはずだ。


「先生。大事話があります。ちゃんと聞いてくれたらレポート書きます」

「わかった。聞くから話して」


 俺の春惠先生の目を見て話し始めた。よくある告白の前ふりだった。


「そんなことがあったから春惠先生が好きになりました。最初は一目惚れだったかもしれない。けど、今純粋に好きです。付き合ってください」


 俺はありったけの勇気を振り絞った。叶わない恋だとしても俺は後悔したくなった。


「ごめんね山木くん。先生は星にしか恋をしなんだ。だからごめんね」

「……」


 落ち込んだ俺を励ますかのように一言をかけてくれた。


「けど、星より夢中にさせてくれなら付き合うかもね」


 俺の初恋の結果は星に完敗に終わってしまった。

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星に完敗 三谷下 @Miyashita3

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