星に完敗

三谷下

前編

俺、山木(やまき)昇(のぼる)は数学教師の榊原(さかきばら)春恵(はるえ)先生のこが好きだ。

一目惚れだった。

まさか俺の初恋の相手が先生になると思わなかった。

どこが好き? と聞かれること多いけど、このさいだからはっきり言うよ。


全部だ!


外見はもちろん俺の理想そのもの。笑ったときの笑顔。平均より少し大きな胸。服の上から隠しているウエスト周りのお肉。細くもなく、太くもなく、いい感じの太もも。二十六歳。素晴らしきの一言だ。

けど、性格もいいんだよな。授業中に対する質問一つ一つ丁寧に教えてくれるし。プライベート相談も真剣に聞いてくれるし。怒るところは怒る。褒めるところは褒める。しっかりといい大人だ。尊敬できるほどに。


「山木くん……」


 だから今日こそは、授業後に先生に告白しに……

 ドン! 春惠先生が強く、両手で机を叩いた。


「いったたぁ」


 痛かったかしらい。春惠先生は叩いた両手をぷるぷるさせていた。

 地味にかわいいな。


「山木くん、寝たふりをしてないで。そろそろ黒板に答えを書きに行ってくれないかしら」


 俺は重いからを起こして黒板へ向かった。


「春惠先生。途中式とか書くのですか」

「もちろん。答えが間違えていたら、正しい答え方法教えられるし」

「俺には必要ないことですけど」

「文句言ってないで早く答えて。授業が終わる前に解説とかしたいから」

「は~い」


 俺を黒板に面倒な途中式を書きながら、春惠先生にどのように告白をしようと考えていた。答えを書き終わると先生から一つのメモを貰った。なんだろうと思いながら俺は席へ戻る。

 春惠先生は黒板に書かれた回答を一つ一つ丁寧に解説しながら授業を進めていた。


 俺は貰ったメモを誰にも見られないように見た。

 そこには授業終わりに職員室に来てと書かれていた。

まさか春惠先生から呼び出しとか……俺から先生を誘う言い訳は消えた。あとはどのように告白しよう。


そんなか考えていたら授業終わりのチャイム音が教室に鳴り響いた。

もうそんな時間か。俺はメモに書いてあった通りに真っ直ぐに職員室に向かった。授業終わりだけあって廊下にはたくさんのふとだかりが居た。

そんなふとだかりを抜けて、俺は職員室の前に着いた。


 なぜか深呼吸をした。

 俺は今緊張をしているかもしれない。

 ふー。職員室の扉をノックし、中へ入った。


「失礼します。はるぅ……榊原先生呼ばれて来ました」


 春惠先生は席を座ったまま俺の方を向いて、手を振った。


「山木くんこっち、こっち」


 俺は右手を心臓にあてながら先生のところまで向かった。

 先生に近づくたびに心臓が張り裂けそうになる。


「先生、来ましたけど……」


 妙にウキウキ? わくわく? みたいな表情しながら机の引き出しから一枚のプリントとチケットを取り出した。


「山木くんって天文学に興味なかったりしない」

「えっ! 天文学って星のやつですよね」

「そうだよ」

「いや……あんまり興味はないです……」


 先生はわかりやすく肩を落とした。


「へぇー」


 魂が抜けたような返事。

 まずい、好感度あげるチャンスなのに。


「けど、星座には興味はあるかな……」

「本当に! なら今から渡す紙に天文学部って書いて」


 俺は一枚の紙を貰った。


「これって入部届けの紙じゃないですか」

「そうだよ。山木くんには天文学部に入って欲しいの。去年は卒業生がいたから天文学部は活動をしていたが、今年部員数がゼロ。廃部目前なの」


 帰宅部のままがいいけど……


「先生がマンツーマンでたっぷりと星座の魅了おしえるから」

「マジですか。入部します」

「ありがとう。今週の祝日って空いている? 毎年、部活動で行っているプラネタリウムに行かない」


 やばい、その日はバイトだけど……


「はい。もちろん、空いています」


 春惠先生は出していたチケットを一枚渡してきた。


「国際公園前駅に九時集合。遅れたら単位あげないからね」

「わかりました。では、失礼します」


俺はそのまま職員室を出た。

あれ、これってデートなのか。知らないうちにデートの約束していない。これは間違いなく先生は俺の事が好きだろ。そう考えると心臓が爆発しそう。

俺は祝日に向かって準備を始めた。


翌日には伸びきっていた髪を切りに行った。普段は家近くの床屋に行くが、今回は初めて美容室に行った。その後に服を全身揃えた。靴も買ってしまった。

太っていた財布も今日は激やせだな。


「すべては春惠先生とのデートに! 後に告白を!」


 俺は家に帰り、十分ってぐらいに睡眠を取った。


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