皇居の河童

明治時代になって岩手県の遠野に河童が住んでいるという話が有名になった。とうの河童たちにとってはたまったもんではない 。有名になりすぎては人間たちに殺されてしまうからだ。そこで河童たちは移動をはじめた。


移動は大変に難儀だった。何しろお皿が乾いては死んでしまうし、水辺と水辺の間をお皿が乾く前に渡らないといけないのだ。そうしてどうにか河童たちは命からがら北海道に移住したのであった。しかしじつのところ北海道は河童たちにとっては寒すぎるところであった。


時が流れて北海道新幹線が東京まで直通運転をすることになった。河童たちは北海道の暮らしにうんざりしていたので、東京に引っ越しをしてみようということになった。そこで河童たちは新幹線に乗るために変装を練習し、アルバイトをして切符代を貯めた。そうして100人の河童が新幹線に乗ることになった。河童たちは車内販売で水を買ってはお皿を濡らし、憧れの東京に想いをはせた。水を買うお金が尽きた河童たちのお皿はだんだんと乾いてきた。

東京駅に着いた河童たちは水の匂いを探して一目散に丸の内方面へと走った。見つけたのは皇居のお堀である。河童たちは我先にとお堀に飛び込んだ。今では河童は皇居のお堀に住んでいる。しかし今度は水が汚いので引越しを考えているそうな。

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未配達新聞: グラヴィティ・タイムズ 牧野大寧 @maquiwo

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