乙女ゲーム
@doloresleemaria
第1話 乙女ゲームへようこそ
目覚めて彼女が初めて目にしたのは、膣鏡を片手に持つ実物大のピンク色のテディ・ベアだった。
彼女はまた失神した。
ふたたび目覚めた時、テディ・ベアは彼女に寄り添う形で寝そべっていた。
夢?
すると、突然彼女は下腹部に電流が走るような痛みを感じた。彼女は裸だった。
彼女は恐る恐る掛け布団をめくってみた。彼女の恥丘に黒い魔法陣のような紋章が描かれていた。
これは何?
こすってもこすっても、消えない。これは刺青だろうか?勝手に誰かに刺青を入れられた?そしてこのテディ・ベアが、私の膣をまさぐっていたのは、この刺青のせいなのだろうか?
彼女は思わず嘔吐感をもよおし、ベッドから立ち上がった。
ここはどこ?
一見、保健室のようだった。しかし、彼女の通う学校の保健室ではない。見慣れぬ病室だ。壁は漆喰で、ところどころペンキが剥がれている。
「いったい何……」
彼女がそう口走ると、声がした。
「よくぞ目覚めた、祝福されし乙女よ」
彼女は目を疑った。その声はテディ・ベアから聞こえてきたのだ。それは変声期前の少年のような声だった。
彼女はのけぞりながら、テディ・ベアから距離を置いた。
「な、中に誰かいるの?」
「中には誰もおらぬ。コットン100パーセントじゃ」
「じゃあ、どうしてぬいぐるみが話すの!」
「わしは幽霊なのじゃ。わかりやすかろ?」
「はあ?」
彼女はテディ・ベアに近づき、乱暴な手つきで背中のチャックを開けてみた。確かにコットンが詰まっていて、人間が入る隙間などない。テディ・ベアはけらけら笑い、
「いやじゃあ、恥ずかしい」
とからかうように体をのけぞらせた。
「恥ずかしいって何!あたしだって、なんで裸なの!あなた、何者?」
「ううむ。おぬしにわかりやすく言えば、
彼女は呆気に取られた。
テディ・ベアの魔法使いが、私の恥丘に刺青を彫った?
「ああ、その魔法陣はわしが彫ったのではないぞ」
テディ・ベアは何もかもお見通しといった風に釘を刺した。
「祝福されし乙女にはそこに魔法陣が浮かび上がるのじゃ。祝われしことじゃの。1000年に一度のことじゃからなあ」
「待って。今……なんて言った?聞き間違えなら嬉しいんだけど」
「1000年に一度……」
「それもちょっと気になるけど、その前。最初のほう」
「祝福されし乙女なのじゃ、おぬしは」
テディ・ベアは半ば楽しんだ様子で、
「それより何か着るものを与えよう。一応これでもわしは男なのじゃ。いや、まあ、死んでるんじゃが」
一瞬立ちくらみのようなものを感じてふらついたあと、彼女は自分がいつの間にか服を着ていることに気づいた。現代の服ではない。どちらかといえば、海外の名画で貴族が家着として着ているような簡素な白のペチコートだった。
「今、この服を……」
「
「待って。これって夢だよね。そうじゃないとやってられない」
そのとき、窓際に鳥が止まった。鳥が鳴くのかと思うと、日本語で、
「ゆら!」
と彼女の名を読んだ。聞き覚えのある声だった。しかしその声の主を思い出そうとする前に、鳥はたちまち弓矢で射抜かれ死んでしまった。
乙女ゲーム @doloresleemaria
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