第17話 重大っぽい仕事

「サヨコ君、おかしなことになったぞ」

 なんで私がサヨコ君に報告しなければならんのだ、と思わないでもない船長だったが、話相手はサヨコしかいないので、大げさな調子でそう言った。サヨコは、毎度おなじみの無視を決め込み、自分の髪を指でつまんで考え事をしている。さっき七号が言った言葉に触発されて、髪型を変えようかと考えているのだった。君はそのままでいいのだ、サヨコ。

「現状はこうだ」眉間の皺も深刻に、船長は言う。「十三号が、どこから仕入れてきた知識なのか、合コンなぞをしたがっている。そして島村の同僚として、七号の存在が確かめられた。十三号は、この七号と連絡し、高橋と島村を合コンの場で出会わせようとしているらしい」

 こうして喋るにしたがい、船長の眉間の皺は消えていき、最後にはキョトンとした真顔になった。「……おや? もしかして、バッチリなのか?」

「今ごろ気が付きましたか。ええ、バッチリです。合コンをさせましょう」

 二人は目を合わせ、頷きあった。早速十三号に通信して、合コンの許可を与える。

〈了解した〉と十三号。〈すぐに開催してもいいのか?〉

「いや、ちょっと待ってくれ。我々には合コンの知識がない。それを勉強し、有意義な会となるよう、作戦を立てる。それまで待ってくれ。そうだな、ちょうど一週間後ということにしよう。お前もその間、上手く合コンに持っていけるよう、それとなく高橋の様子を探っていてくれ。当日に残業なんてことにならないようにな」

〈わかった〉

 話の内容は合コンだが、ともかく仕事をしているような雰囲気で、

「よしサヨコ君、なんだか活気付いてきたぞ。次こそ成功させねば。重大な仕事だ。地球の興廃をかけた、いわば未来が、全人類の命運のかかった、そんな……合コンだ」

 そんな合コンがあってたまるか、といった感じだが、大げさに言えばそうなのだ。

 それから船長とサヨコは、集めた資料、と言ってもマンガとかドラマとか映画とかだが、それを研究して、やがて一つの作戦を立てた。

「今に見てろよ高橋、そして島村。のほほんとしていられるのも今のうちだ」船長は不敵な笑みで息巻く。「一週間後にはお前たちも、愛する相手が見つかるのだ。ざまあ見ろ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る