土砂降りの雨が降る

 十六人のデューンライダーたちは、結局戦うことなく戻ってきた。砂漠の真ん中で、乗り捨てられた真っ赤なバギーが一台と、巨大な天使の残骸が見つかった。ベリトと名乗っていた美しい天使の少年は、二度とわたしの前に姿を現すことはなかった。


 やがて、収穫の季節が訪れた。


「シェディムお嬢様。そんなに雨に打たれては、お腹の御子に触りますよ」

「そうね、ミリアム。でも、あなたも同じでしょ」

「まあそうですけど」


 ミリアムのお腹の子の父親はレニーズである。いや、そういうことになる前に、わたしもプロポーズを受けたのだが。わたしの方から断った。わたしは誇り高きオアシスの女、あの母の娘である。子供に父親なんかいらない。そう言った。


「名前はお決めになりました?」

「男の子だったらベリト」

「多分女の子ですよ」

「なぜ決めつける」

「だって、お嬢様の子ですもの」

「まあ、そうね」


 天使と人間の血を分かち持つ、新しい世界の申し子。この子はどんな子供に育つだろう。


 ……とりあえず、嘘吐きにはならないように育てよう。そう、思った。

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ベリト、嘘を吐かないで きょうじゅ @Fake_Proffesor

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