第16話:【交流・開店前】
「これだけは覚えられるか、お客さんが来たら『いらっしゃいませ』、帰る時に
『有難うございました』っていう挨拶なんだけど」
『やってみます』
何度か発声練習をしているうちに少し辿々しいところは有るものの聞いていておかしく無い挨拶が出来る様になった。
「これなら大丈夫だろう。それじゃぁ店の説明をしようか」
『お願いします』
二人で店舗へ向かう。
まずはイシェリカにエプロンを渡す。黒字に店のロゴが印刷されたシンプルな物だ。
エプロンを着けている様子を伺うが問題なく着けられるようだ。
店内の大まかな説明を行い、対応の流れを説明していく。
「さっきも言ったように今日は仕事を覚える事を第一に挨拶と、皿洗いをやって欲しい」
『はい、分かりました。よろしくお願いします』
開店二十分前、店の扉がノックされる。
「イシェリカさんはそこに居て良いよ」
言い残し扉の鍵を開ける。
「おはよう亮司、今日の分持ってきたよ」
「おはよう
元気な挨拶と共にプラケースを二段重ねにして持つ女性が入ってくる。
彼女は
茶色く染めた少しクセの有るショートヘアに少し目尻が下がった明るい表情が
似合う。身長は百五十程でスレンダー、ボーイッシュな格好を好む女性だ。年齢は聞いていないが二十代半ばには届いてい無いと思う。
咲華からケースを受け取り、受領書にサインをする。受領書を渡すとニヨニヨとした表情の咲華が目に入る。
「彼女?」
「ちげーよっ」
揶揄う気満々の咲華にイシェリカを紹介する。
「彼女はイシェリカ、遠縁の娘で日本に興味があって暫くうちにホームステイする事になったんだ。まだ日本語は話せなくて今勉強中」
イシェリカを手招きしスマホの翻訳アプリを起動し彼女に持たせる。
「彼女は霧島咲華。霧島が苗字で咲華が名前ね。店で出すケーキを持って来てくれたんだ。時々一緒に釣りに行く事もあるから店以外でも一緒になる事があると思う」
「宜しくね、イシェリカさん」
咲華の言葉に合わせ念じる。イシェリカに伝わったようで彼女は咲華に向けて右手を差し出し
「よろしく、ね」
イシェリカは日本語で挨拶を返し二人は握手をする。
「おっと、次の配達先に行かなきゃ。またね〜亮司、イシェリカさん」
「おう、またな」
慌ただしく去っていく咲華を見送り、ケーキを保冷ケースに並べる。残りは裏の冷蔵庫へ保管する。最初の一品を並べた後、残りをイシェリカに任せてみた。
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【短編】僕と彼女の別れる理由 公開しました。
よろしければ読んで見て下さい。
https://kakuyomu.jp/works/16817139556464269199/episodes/16817139556465980184
はじめて⭐︎を頂きました。
とても嬉しかったです。
フォローや評価を頂けるとやっぱり励みになります。
ありがとうございます。
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