Day25 キラキラ

「手を出して」

 と先輩が仰るので、私は素直に従う。満面の笑みが逆に胡散臭い。けれど、従わない理由にはならない。

 右手を出したら「左手も」と要求された。小さく息を吐く。一体なんなんだ。内心でぼやきながら両の掌を天に向け、お椀のようにして差し出す。

 どこからともなく小瓶を取り出す先輩。

 小気味がよい音を立ててコルク栓を抜いた。かと思えば、私の掌の真上で逆さまにした。

 すると、金平糖が落ちてくる。ころころ、ころころ。小さな突起を無数に生やした砂糖菓子は、あっという間に私の掌を一杯にする。でも、まだ止まらない。どんどん降ってくる。流星群のように。金平糖は掌を溢れて床に落ちる。フローリングに落下して、少し跳ねて、ころりと転がる。

 どう考えても瓶の許容量を越えた金平糖たち。私が戸惑う間も、まだまだ降り続ける。先輩だけが笑顔だ。

 目映い笑みと金平糖。交互に視線を遣っていると、あることに気が付く。

 金平糖が奇妙なほど透き通っている。

 私の知っている砂糖菓子と違う。幼い頃に食べた金平糖はパステルカラーで、いろいろな色があった。けれど透明感はなかった。

 今、手の中にある金平糖は確かに淡い中間色の集合体で、カラフルだ。そして、もの凄く透明だ。水のように。ダイヤモンドのように。向こう側が見えるぐらい透き通っていて、光を反射している。

 私の心中を察した先輩が「これはね」と言葉を紡ぐ。

「金平糖じゃないよ」

 表情も、声も得意げな先輩。

「これは宇宙の星々だ。俺がひとつひとつ手ずから拾って、魔法の瓶に閉じこめた。君のために」

「私のために」

「そう。掌に納めた君は、星を束ねる総督だよ。おめでとう」

 そう言われても困る。突っ込んで追究したい部分も多々ある。

 けど、気分は頗る良い。総督という響きも。先輩が自ら拾ってきてくださったという事実も。私の心を昂ぶらせて止まない。

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