第17話

「さてさて、それじゃあいきましょうかね・・お?白雪さんや・・・なんだよ今日は雄型かぁ・・・雌型でもいいんすよ?眼福だし???」


やる気を見せた鏑木の前にほぼ白で統一され、男性としてはやや長めの髪型で毛先や着ている物の先だけ桜の色があり、顔は丹精で儚げな印象を抱かせる長身の男が無表情で佇んでいた。鏑木としてはゲーム内外でもよく顔を合わせる為、別段違和感はないものの、3Dから現実に切り替わった際のインパクトの強さに新鮮さを覚えている様だった。


「今回エスコートをされるのは私ではなく、このウイですからね。それに鏑木さんお嫌いでしょう?ハーレム。」


「そりゃそうだけど!それもそうだなぁ・・・、ってかゲームじゃないなら眼福がいいんですけど!!」


「こちらで体を用意してしまったので今回はもう無理です。次回の際にはご要望を受け入れましょう・・・しかしながら我らの姫には失礼ですので、機会には恵まれないかと思われますが。」


「姫・・・?お姫様なの??染井吉野が・・・・?ゲーム内でもリアルでも本数としての母数はめちゃくちゃあるやん?こっちは違うの?」


「そうですね・・・そちらの説明を始めると一向に進まないので簡略いたしますが、こちらの染井吉野は鏑木さんの世界の歴史では552万年前に分たれた昭和の時代に奇跡的にまた出会った染井吉野がソメイヨシノとして繁殖した物ではなく。主上であらせられる神代江戸彼岸櫻様と大嶌櫻様とのお子様等になり、我らが十桜の大事な姫達でいらっしゃいます。」


「ぇ・・・待って・・・ってことはなんですか・・・・552万年前の段階で違うってこと・・え・・・恐竜さんめっちゃおるってこと・・・・?」


「あー・・・そちらはノーコメントでお願いいたします。というか流石ですね観点が違いますね。姫の方に食いつくのではなく、自分がこれから足を踏み出す世界の状況について考えるとは。鏑木さんはやはり面白い。」


「よせやい!いやもうツッコミどころが多すぎてそれどころじゃないというか目先からまず考えただけだわい・・・複数形での話をしてるってことは染井吉野はお姫様ばかりなんだな?」


「そうですね。そちらに関しては現代同様に単一での繁殖ができないので、鏑木さんの分かるように言い換えるなら嫁ぎにいくと言うことです。簡単に言うならば、鏑木さんの出張内容は大事なお姫様を嫁ぎ先まで守ることとなりますね。」


「あー・・・そういう・・・めちゃくちゃわかりやすいな。初めからそう言ってくれてればよかったのに・・・」


「普段穏やかなのに事前説明と報告連絡相談がないと真顔で説教をしてくる主任にそんな端折った説明は流石にいたしませんよ?」


「毎回めちゃくちゃ人間味がありすぎると思ってたけどまんまだったんだな・・・戯けた顔しやがってこの野郎」


「人ではないことには変わりはありませんよ。ただ思考をもつ生物であるだけです。しかしその括りですと人というのでしたか・・判断は難しいですね」


「いやもう今更お前さんが人とか機械とかそれ以外だろうと何でもいいよ。俺達はお前達を家族と思って接してきてたわけだし。ただの誤差だろ?そんなもん」


そう真顔で言い切る鏑木の姿を柔らかい笑顔で白雪は眺めるのだった。



「さてそろそろ準備し始めないとウイが蝶々と追いかけっこし始めてるな・・・ってか話戻るけどさ。万年規模で違うってことはここ日本じゃねーんだろどうせ?」


「そうですね・・・日本ではないですが、現在地としては日本の東京に近い場所です。奇しくもソメイヨシノの発祥とされる地方と一緒です。目的地としてはハルスの地へ向かっていただければと思います。準備といたしましては鏑木さんにも馴染み深い環境で今回はご用意いたしておりますのでご確認の程お願いいたします。」


「ハルス・・・ラテン語じゃねーな・・・わかんねーな・・・まあわからない位が一番ワクワクするよね!馴染み深すぎてもう違和感ねーな・・・視界の中に操作画面というかコンソールが全部あるし、操作方法も脳内で指示出るからもうもはや気分はフィクションの中のVRだわ・・んじゃとりあえずいくとしますか!ってどこから出ればいいん・・・?」


そうして二人と一人の姫の旅路が始まるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

お客様サポート係のおっさんが出張で異世界に行かされた話 ロー @bluesoul

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ