第16話
まず、この世界についてですが・・・そうですね日本ではあります。ただ八重桜さんがご存知の日本とは違います。)と切り出していく
地図上では一応日本ですがやや日本といった感じです。西暦の世界線では恐竜の時代が隕石と共に滅び、人間種が生存し世界の覇者になっておりますが、こちらでは隕石の影響のあと生存した種が人間ではなくなりこちら側の世界では科学の発達ではなく、生物植物の発達が進み神秘性がそのまま発展している世界であること。原初世界のまま歴史を重ね、重厚な生物の歴史の上で生物の本能として常にテリトリーの取り合いと食物連鎖が行われている。その中で弱い生物、群れをなさなければ生きていけないも、繊細な生物もたくさんいる。そういったものの為の宿木として染井吉野の桜を地域に派遣し根づかせ保護を行うことが大きな目的であることを話していく。
「ぇーと・・・・把握しました。まあとりあえず染井吉野の株を始原日本の方々に植えるのが仕事ってことでいいんだよね?」
(そうですね非常にざっくりいうとそういうことです・・・・・まあ鏑木さんの場合ですと下手に説明しない方が良いですからね・・・)
後半はうっすらと聞こえるか聞こえないかの呟きをしながら、補足の説明するのを諦めた。
「ん?なんか今失礼なこと言ってなかったか?」
(・・・気のせいですよ。ではご準備をしてまいりましょう)
首を傾げながらおかしいなぁとぼやきながら八重紅枝垂桜の木の幹の間から身体を抜いてしっかりと首だけしか見ていなかった箇所以外の風景もしみじみと見渡し始める。
説明しよう!鏑木和毅等のブラック企業勤務者の経験で常に無理難題にぶち当たってきている為必ず最悪から理想のゴールまでを客観的に考える癖が出来上がっているのである!過程に意味はなく結果を出すための最短はなんなのか、会社の求めてるゴールはどこなのか、どこまでやれば許容範囲なのかを瞬時に考える社畜習性がついてしまっているのであった。
脚元から手、腕とゆっくりと感覚を確認しながらゆっくりと頭が冴えていく感覚を覚え、そのまま思考の波が起き始める。
感覚は「ある」、己の身体をを動かすことと同じ感覚が。視界もある、思考もある、記憶も臭覚も触覚も。ただ沸き起こることとしてはリスクマネジメントの感覚。これは本当に自分が感じている物なのか?騙されているんじゃないか?あちらの自分は死んでいたりするのか?このまま流れに飲まれていいのか・・・
思考が冴えていることもありいくらでも考えが湧いてくるが、それ自体がおかしいという感じもある。歳とともに長時間の深い思考はなかなか継続できないのが当たり前だった。では今はどうだ?いくらでも考えることができるしいくらでも思いつくことができる。それ自体が現時点で一番怪しい。
周辺を見渡しても明らかに木造と石工以外にも鉄のようなものも見える。古代の様で明らかに現代の技術に匹敵するそれがある。
それに「染井吉野」という桜の歴史として、クローンで繁殖している桜であり、明治の時代にヤマザクラとエドヒガン桜を掛け合わして作られた人工的な品種であり、しかも交配で増えたわけではなく接つ木、挿木で増えた品種である。
その染井吉野を現代と同じように全国に巡らせる意味とは・・・と考えていると服の縁を引っ張られる感覚に思考の海から浮上して、視界にうつる小柄な桜色の髪の子と眼が合う。にぱーという効果音が背後に見えてくるような笑顔でこちらを伺ってるのを見て、思考を諦めた。
「まあ行雲流水かねぇ。海外も仕事で行った姉貴が子供も残してくれた。その子供らも大きくなって自分達で考えられるまで育った。人生やることは、一通りやって悔いはない。ただ報恩感謝。オヤジさんとアニキに恩を返すだけだわ。ならやるだけだな。「卯のい」だと言いずらいから安直だけどウイとでも呼ぼうかね?いいかい?」
「はい!!!よろしくお願いします!!!紅枝垂殿!」
「ああそうか・・・俺のそうだったなぁ・・・っと白雪も変わらずよろしくな!絶対俺一人だと無理だし!手探りでやったら全然終わる気がしないから!」
(もう思案は大丈夫ですかね?鏑木さんだけではなく弊社の方々はどなた様も似たように少し深い思考に入られた後スッキリした顔になられますよ。)
「ははは!そりゃオヤジに救われた連中ばっかりだからなぁ・・・似た様な奴らばっかだもんなぁ・・っし!んじゃとりあえず準備から始めてこうかね・・おいおい分かるっしょ!英語も話せないのに英語の国に単身飛ばされた時を思い出せばなんとかなる、なんとかなーるっ!」
と自分に言い聞かせるように両手を空に上げて万歳をしながら元気よく声を出していくのだった。
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